アベノミクスその後(2014_9月号)

あさひグループ代表 柴田健一アベノミクスその後(2014_9月号)

あさひ会計では500件を超えるお客様の決算書から黒字会社の比率や黒字額を対前年比で調査している。申告書の申告は期末の2ヵ月後だから、現時点では5月決算までの数値が集計されているが、対前年比では黒字率も、黒字額も増加している。つまり決算書レベルでは企業の業績は確実に回復している。

にもかかわらず景気が回復している実感が伴なわないのは何故だろうか。アベノミクスではデフレ脱却のために①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長政策の3本の矢を放ったのだが、黒田総裁率いる日銀の異次元緩和で為替切下げ(円安)は成功したが輸出が思ったように伸びていないのが現状だ。原因は20年近く続いたデフレ時代の6重苦(円高、電力不足、法人税率高、雇用規制等)で日本の工場が既に海外に移転済みで円安になったからといって国内工場からの出荷は不要ということらしい。しかも、生産設備や熟練労働者も不足しており国内生産の増強もままならない状況だ。

過去の景気回復のパターンは、輸出が伸びて、生産が増え、企業業績が回復して、設備投資が増え、賃上げがなされて消費が回復するというものだったが、今回の景気パターンは輸出が伸びないため国内生産は増えず、大企業は円安の影響や海外子会社の業績も加わり史上最高の好決算を達成しているが国内設備投資は増えず、期待したほどの賃上げもなされないため消費も回復せず景気はもうひとつパッとしないといったところだ。

デフレ経済完全脱却のための課題は、設備投資増加と賃上げによる消費支出の増大だろう。大企業の好決算の影響もあり中小企業の業績もかなり良くなってきているのだが、設備投資は更新投資や省力化投資の域を出ず、ドーンと前向きの能力増強投資をする会社は少ない。今年2月には安倍首相が経済団体向けに賃上げ要請を行ったがトヨタでさえ2700円の賃上げでしか応えず経営者は慎重だ。

アベノミクスは1本の矢だけで、2本目、3本目の矢は的をはずしているのではないかという声もある。そのような中で安倍政権は成長戦略実現のための第一歩として現在34.62%の法人税実行税率を今後数年間で20%台に引き下げると発表した。法人税率の引下げは外国企業の誘致や国内企業の海外流出の抑制につながるとの声もある。同時に外形標準課税を中小企業にも導入して、7割の赤字企業にも道路等の行政サービスに見合う負担を課すことも予定している。

しかし、法人税率の引下げだけで成長戦略が実現するものでもない。設備投資の増強や社員の賃上げには、何よりも経営者の将来への夢とアグレッシブな経営者魂が必要と思うのである。