オーナー貸付金の相続問題と対処方法(2017年_7月号)

オーナー貸付金の相続問題と対処方法(2017年_6月号)

監査6部 チームマネージャー 税理士 松田 茂

会社の資金繰りが厳しい際にオーナー経営者が会社に資金を貸し付けることはよくあることです。一時的なものであってすぐに返済されるものであれば問題はありません。しかし、返済されずに残ったままになっていると、オーナー経営者に相続が発生した際にこのオーナー貸付金は相続財産として相続税の対象となります。たとえ、相続時に返済予定の目処が立っていなくとも、相続税が課税されるとなれば納得のいかない方も多いのではないでしょうか。

相続税法上、貸付金債権の評価は原則として「その返済されるべき金額」となっており、会社の決算書の負債の部に計上されている「役員借入金」の残高金額が相続財産の金額として認識されます。貸付金債権については、土地や株式のような「時価」という概念はなく、あくまで「債権の金額」がそのまま相続財産の評価金額となるのです。

相続発生時において「貸付金債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときは、それらの金額を貸付金債権の金額から除いて計算する。」という評価の特例は設けられていますが、この特例が適用される条件は非常に厳しいものとなっています。この特例を適用する状況の判断時期はあくまで相続発生時であり、その時点において会社が営業活動を行っていれば、まず認められることはありません。過去の国税不服裁判所の裁決では、会社を清算したため、この特例を適用したものの否認されたケースがあります。

それでは、回収することが見込まれないオーナー貸付金についてどのように処理すれば良いのかということになりますが、現行の税制上では
①オーナー貸付金の資本化(DES)
②債権放棄
③相続開始前の会社清算
④債権贈与
の4つの方法が考えられます。

①の方法を選択する場合の注意点は、平成18年度の法人税法の改正により、現物出資するオーナー貸付金債権の評価を時価により行うため、場合によっては債務消滅益が発生し、相殺する欠損金が無い場合には会社側に法人税の負担が生じる可能性があることです。また、資本金等の額が増加するため、地方税の均等割の負担が増加する可能性もあります。
②の場合の注意点は、債権放棄した金額が会社側では債務免除益として計上され、相殺する欠損金がない場合には法人税の課税対象となることです。
③の場合の注意点は、相続開始前に事業を停止し、解散・清算手続きに着手しておく必要があるということです。
④の場合の注意点は、贈与税の問題です。この場合も貸付金債権の額面額が贈与金額になるため、暦年贈与制度を利用する場合、110万円を超える金額に対して受贈者側に贈与税が課税されることになります。したがって、他の3つの方法と異なり複数年にわたって行う必要があるということです。

いずれの方法を選択するかは、会社にとってどの方法が有利であるかであり、生前において実行することが重要になります。