フィンテック企業の躍進(2017年_8月号)

フィンテック企業の躍進(2017年_7月号)

公認会計士・税理士 田牧 大祐

先日、大手会計ソフトメーカーA社の担当者から訪問したいと連絡を受け、その訪問理由に驚かされた。あさひ会計ではA社ソフトをはじめ、様々な会計ソフトを使用しており、フィンテック企業のクラウド会計ソフト※1では、マネーフォワード、freeeも使っている。

そのfreeeがある金融機関と提携したことを受け、歓迎のコメントをもらいたいとの依頼があった。freeeのニュースリリース用にあさひ会計としてコメントをつけたのだが、このコメントが、A社の“他社ソフトの広告宣伝禁止規定”に抵触するという訪問の理由を聞かされた。内容は、コメントを取り下げるか、事務所名を特定されないような表示とするか、さもなければ6ヶ月以内にあさひ会計へのA社ソフト提供を中止するといった話であった。

この訪問は、創業約50年の業界大手が、わずか設立5年のフィンテック企業のHPを調べ、神経を尖らせているということであり、会計ソフト変革の時代、フィンテック企業の躍進を象徴するものと感じた。もちろん、業界大手の会計ソフトメーカーも同様に、クラウド化、フィンテックへの対応(銀行取引自動取込等)はしているのだが、既存のイメージが返ってマイナスに働いている状況もある。今はまだ、フィンテック企業のクラウド会計利用者は少数派だが、いずれ大きくシェアが変わる可能性がある。

また、フィンテック企業は、今後さらなる躍進が見込まれる。

平成29年5月26日に可決、成立した「銀行法等の一部を改正する法律」は、翌日の日経新聞では、5面経済欄に小さく掲載された程度であり、その内容を知る人は少ない。

フィンテック企業を電子決済等代行業者※2として登録制とする一方、金融機関へオープンAPI※3、電子決済等代行業者との連携等の方針の策定・公表の努力義務を課すものであり、公布日から1年以内に施行される。これは、世界的規模で加速するフィンテックに対応する制度的枠組であり、たとえば、これまで顧客が金融機関毎に支払、送金を指示していたサービスを、顧客は電子決済等代行業者に委託、電子決済等代行業者が金融機関にまとめて支払、送金指示を行う事などが想定されている。

ますます、フィンテック企業が金融、会計業界を変革し、これまでのサービスを変えていくことが見込まれている。

※1 銀行取引、クレジットカード取引の自動仕訳等が可能で、財務、経理の省力化につながる。
※2 freee株式会社や株式会社マネーフォーワードといったITベンチャーを想定しており、業務管理体制の整備等が求められる。一方、顧客から資金を預かることはない。
※3 顧客の同意に基づき、銀行が外部企業等に銀行システムへのアクセスを許諾し、銀行システムの機能を利用する事が出来るようにすることをいう。みずほ銀行では既にAPIの提供を開始している。