井山七冠に学ぶ(2016_9月号)

井山七冠に学ぶ(2016_9月号)

公会計部  榎本 宏貴

ニュース等でご存知の方も多いと思いますが、今年4月、囲碁棋士の井山裕太氏が国内の主要なタイトル7つを独占し、囲碁史上初の七冠を達成しました。
将棋では20年ほど前に羽生善治氏が達成した七冠ですが、囲碁は将棋と比べて手数が倍以上になるため、心身への負担が大きく、七冠は「不可能」という声もあった中での偉業です。

10年以上前になりますが、高校で囲碁部に所属していた私は、テレビの囲碁番組がきっかけで井山七冠のことを知りました。すでにトッププロに混ざって活躍していた井山七冠に衝撃を受け、また、私と同い年ということもあり、以来、最も応援している棋士のひとりです。
ほかのタイトルを争ったトッププロ達も非常に強者揃いではありましたが、井山七冠の強さは頭一つ抜けていました。

強さの秘訣はなんでしょうか。囲碁の実力も折り紙つきですが、それ以上に、対局に向かう姿勢が井山七冠の強さを生み出しているのではないかと思います。

1.誰も思いつかない手を打つ

解説者や検討室(タイトル戦ともなると、トッププロが別室に集まり、打たれた手の評価や今後の進行の予想をします)で誰も思いつかなかった手を打ち、そのまま勝ちきってしまうことが多々あります。プロが常識的に考えると目がいかないところでも、井山七冠は常に広い視野を持ち、常識にとらわれない柔軟な発想を持っています。

2.諦めない

師匠である石井九段も「決して諦めないという執念、強靭な集中力で戦っている」と評する通り、井山七冠は形勢が悪くなっても、冷静に逆転する方法を探っています。この1年間だけでも数局、ほかのプロが諦めるような局面からの大逆転劇を演じています。

3.常に最強手を選ぶ

勝負の世界ですので、リードしている側はそのリードを守り切ろうと「守り」に入ってしまうものですが、井山七冠はリードしていても常に攻めの姿勢を崩しません。以前、どうやって打つ手を決めているのかという質問への「打ちたいところに打つ」という答えの通り、井山七冠は一時の勝ち負けよりも囲碁というゲームを追究しているのかもしれません。

井山七冠の碁は柔軟な発想で、劣勢になっても諦めず、常に最強手を選ぶので、見ていて非常におもしろく、応援したくなるところでもあります。大偉業を成し遂げた井山七冠ですが、今後は国内だけでなく、世界戦やコンピュータとも熱戦を繰り広げてくれることでしょう。