愛しき文房具(2017年_7月号)

愛しき文房具(2017年_6月号)

監査5部  鬼海 賀代子

30年位前になるでしょうか。社会人になりたての頃、私の初めての上司は女性の方でしたが、その上司から「安いけど、これ書きやすいのよ」と、1本の万年筆をいただきました。その頃、私が持っていた万年筆のイメージと言えば、銀行の支店長が仰々しく胸ポケットから黒光りした万年筆を取り出して書類にサインする、といった堅苦しい物でしかなく、当時10代だった私が万年筆を使うのは何だか気恥ずかしく、試し書きをしただけで結局その万年筆を使うことはありませんでした。

その後、会計事務所に入社したのですが、当時は会計ソフトが出始めた頃で、コンピュータ会計と手書き帳簿が混在していました。固定資産台帳や売掛表、申告書、科目の内訳書など手書きで作成しているものもあり、まだまだ「書く」ことが多い環境でしたので、その頃から少しずつですが文房具類、特に筆記具類に興味を持つようになりました。そして、あの時せっかくいただいた万年筆を使わなかったことを後悔しました。

何年か前になりますが、担当させて頂いている会社の社長様から、万年筆で書かれた直筆の手紙を頂戴したことがあります。とても丁寧に書かれた文字の一つ一つが、社長様の人柄を表しているようで、とても嬉しくなったのを覚えています。ビジネス文書などはパソコンで作成することがほとんどになりましたが、手書きの文字のほうが相手に気持ちが伝わるような気がして、書類を送付する時の送付書は、手書きで書くようにしています。拙い文字ですが、お客様の顔を思い浮かべながら丁寧に書くことを心がけています。

また休みの日や時間がある時は書店や文房具店を巡っています。ほとんど買わずに眺めるだけで終わるのですが、あれこれ見て回る時間がとても楽しく、私にとってとても大切な時間となっています。万年筆やボールペン、ノートやメモ帳、付箋紙やクリップなどなど、売り場を眺めているだけでワクワクします。新しいものを発見するとテンションが上がりますし、お気に入りの文房具が見つかると、それだけで仕事がスムーズにいくような気がするので、なんだか不思議なものです。

あの頃の気持ちを埋めるように、最近では万年筆を使うようになりました。万年筆は高級なイメージがありますが、安くても書きやすいものが意外に多く出ていますので、ご興味がありましたら是非手に取って、使ってみていただきたいと思います。