戦略より管理(70-1)

あさひ70号~戦略より管理~

教科書的には、企業にとって最も大切なことは存続し続けることであり、存続する為には企業を取り巻く環境の変化に適応していくことが絶対的要件である。そして、この環境の変化に適応するために企業自らを変化させていくための課題が経営戦略となる。

十数年前、盛和塾の例会で、塾長である京セラの稲盛和夫名誉会長に経営戦略の重要性について質問したことがある。答えは意外だった。京セラでは経営戦略など立てたことがないという。経営者としての強烈な願望や高い目標は掲げても、経営計画や予算など組んだことがないという。予算を組むと経費だけは予算どおりにいって、売上は予算どおりにいかないのが常だという。

京セラでは、会社を小さな採算単位(アメーバ)に分けて、この採算単位に経営を委ねるいわゆるアメーバ経営が行われている。各アメーバは「売上を最大にし、経費を最小にする」という経営の原理原則を追及している。つまり、経営を計画に委ねるのではなく、月々の「時間当たり採算表」を基に、現場で目の前のことに精一杯取り組むことが重要だと稲盛塾長は説くのである。日本航空でもアメーバ経営を取り入れ、この4月から路線ごとの採算計算を始め、今回の大震災では採算の落ちた海外路線を縮小し、いち早く被災地近郊向けの路線を増便している。

考えてみると、中小企業にとっては「戦略」よりも、「レベルの高い管理」の方が有効なのかもしれない。経常利益率が10%を超えるある製造会社では、顧客ごとの損益計算を行い一単位当たりの顧客の利益貢献度を常につかんでいる。ここ数年で高収益会社となったある卸売会社では、すべての品物について値決めを徹底的に管理してすべての品目について目標粗利を確保している。又、製品別の採算計算を行い、不採算製品を切り捨てたことで赤字から脱却出来た会社もある。

MQ会計的にいえば、利益を上げるには①価格(P)を上げる、②変動費(V)を下げる、③数量(Q)を増やす、④固定費(F)を下げる、の4つしかないのであるが、いずれにしろ、これからの中小企業は、低価格路線では、大量仕入れ、大量生産、大量販売を行う大企業や新興国企業に太刀打ちできず生き残れない。小さな店舗で、価格が高くとも消費者から支持されているコンビニのように、管理レベルを高めて、どの顧客(商品、店舗、仕入先)が自社を支えてくれているのかを見極め、不採算顧客(商品、店舗、仕入先)を切り捨て、新しい顧客(商品、店舗、仕入先)を開拓し、新陳代謝していくことが生き残りの道なのであろう。勿論、高い価格を維持するためには、対応力、品質、鮮度、スピード、明るい笑顔などなど、価格以外のありとあらゆる要素でお客様に満足してもらう必要があることは言うまでもない。