自治体の積極投資(2017年_9月号)

自治体の積極投資(2017年_9月号)

公認会計士・税理士 田牧 大祐

伊勢音頭の歌詞、「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ、尾張名古屋は城でもつ」の下の部分は、名古屋は城によって繁栄しているという意味であるが、今年3月、名古屋城天守閣木造復元決定(名古屋市議会で基本設計費等の予算10億円の議決)のニュースを、多くの方が驚きと歓迎をもって聞いたと思われる。城郭として昭和5年に「国宝第1号」に指定された名古屋城は、1945年の名古屋大空襲で焼失。戦後復興シンボルとして再建築され、当時は2度と焼失しないようにとあえてコンクリート造りとされたのだが、全国あまたあるコンクリート造りの城の中でこれを壊して木造復元というは初めての試みであろう。※1

名古屋市は、普通交付税不交付団体※2ではないが、普通交付税が歳入予算約1兆円のうちわずか57億円とその占める割合はわずか0.6%であり、国からの交付(普通交付税)にほぼ頼らずに財政運営している豊かな自治体といえる。その名古屋市だから出来るということもあろうが、総工費500億円※3、2022年12月竣工という規模と完成までの目標期間には目を見張るものがある。

一方、500億円という金額に、名古屋市民の中にも反対意見があるようであるが、戦後復興シンボルの風化、来場者の見込(収支見通し)について根拠が希薄といった反対意見の説得力は弱い。天守閣の木造化は、大型木造建築の文化、シンボルとしての意義に加え、コンクリート造りよりも長い期間、幾世代を超える来場者による投資効果を考えると、通常の公共施設としての人口減少、財政収支の見通しの悪化を見据え、多くの自治体が将来投資を控える中での積極投資の明るいニュースである。

名古屋市に続き、次に天守閣木造復元をするのはどこの城か、自治体か、期待せずにはいられない。

※1 大洲城、掛川城など、天守閣のない城跡から天守閣を木造復元した城は少ないながらある。
※2 普通交付税不交付団体:普通交付税は、自治体が行政を行うための標準的な経費に対して自治体の税収入等が不足する場合に国から補填されるもの(財源の不均衡調整)であり、ほとんどの自治体が国から多額の交付を受けている(歳入に占める地方交付税の割合分布 中都市12.5%~町村38.7% 地方財政白書)。ちなみに全国1765自治体のうち交付を受けていない普通交付税不交付団体はわずか77団体のみ。77団体は主に、六ヶ所村、東海村など原発関連施設がある団体と豊田市(トヨタ)、刈谷市(デンソー)などの企業城下町である。
※3 地方自治体の地方公会計では、史跡も固定資産台帳に登録し、帳簿価額をつけるが500億円という金額は、日本の城で一番高い帳簿価額になることは間違いない。熊本城の震災復旧工事は600億円であるが、櫓や石垣の復旧も含めているため、熊本城が第2位。