保険の掛け方(2014_4月号)

あさひグループ代表 柴田健一 保険の掛け方(2014_4月号)

経営者の皆様にとって、“保険”は財務リスクを回避するために必要不可欠なものであることは判っていても何となくしっくり来ない代物ではないだろうか。その原因は「保険に加入する目的と加入している保険とがピッタリと一致していない」ことにあるようだ。

損害保険ついては、付保目的とその対応の設定は比較的簡単だ。災害が発生した場合を想定して3パターンに区分することが出来る。

①  当面の操業不能に備え借入金返済をカバーする・・・借入金残高だけ加入

②  災害によるP/L上の損失をカバーする・・・有形固定資産の簿価額だけ加入

③  再建復旧の為の資金をカバーする・・・再調達価額(新築時価)を算定して加入する

一般的には①が最も安く③が最も高い。保険会社の方は③をお勧めするだろうが、会計事務所としては最低②は確保していただくことをお勧めする。創業間もない等で資金的に苦しい時は①でも致し方ないだろう。

生命保険は、税務上の損金性との関連がありより複雑だ。法人が生命保険に加入する目的は大きく4パターンに区分できる。

①  事業保障目的・・・企業にとってオーナー経営者にもしものことがあった場合のダメージは計り知れない。特に創業期であれば、売上減少による資金不足、借入金返済、買掛金支払、退職金、自社株購入など挙げればきりがないくらい資金が必要となる。企業の内部留保が潤沢でない場合は、5年位の期間を目処に保険料が少ない掛捨型で大型の死亡保障を準備する必要がある。

②  役員退職金準備・・・どんな優秀な役員でもいずれ退任する時期が来る。優秀な役員であれば退職金も巨額になることが考えられ、役員の退任時にはP/L上も、資金繰り上も大きくマイナスになる。退職金準備のために保険を活用する場合、例えば、役員の退任時に解約返戻金がピークになる2分の1損金タイプの法人保険に加入すれば、長期間にわたって課税の先送りをしながら退職資金を蓄積でき、役員の退任時に解約すれば解約返戻金(+)を退職金(-)と相殺しつつ、退職資金を受取ることになる。

③  相続対策目的・・・相続対策としては保険の3分割法が有利だ。(イ)被相続人(経営者)が被保険者で契約者の場合、保険金は相続税の対象となるが、一定の控除枠がある。(ロ)相続人(後継者)が契約者で被相続人が被保険者の場合、保険金は2分の1課税となる。(ハ)会社が保険契約者の場合、受け取った保険金を死亡退職金として支給すれば、退職金は相続税の対象となるが控除枠がある。

④  緊急予備目的・・・保険を「節税商品」として使用するものだが、通常はお勧めしない。納税してこそ内部留保が厚くなるのだから。

 

 

 

 

 

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