地方創生と中小企業の役割(2016_3月号)

地方創生と中小企業の役割(2016_3月号)

公認会計士・税理士 田牧 大祐

「このままでは多くの地域が消滅するおそれがある※」として平成26年5月の『消滅可能性都市』というショッキングな発表を契機にはじまった地方創生ですが、その後「まち・ひと・しごと創生法」(以下、「地方創生法」)の公布を受け、現在全国の自治体において人口ビジョン、地方創生総合戦略が策定されています。すでに策定された自治体の総合戦略を見ると、ローカルブランド立上げ、6次産業化、企業誘致対策、官民一体での産業振興等、雇用の創出に向けた様々な施策を計画しています。地方創生法第一条の目的には、人口減少に歯止めをかけ、東京圏の人口の過度な集中を是正し、~中略~ 地域に魅力ある多様な就業機会の創出の施策を計画、実施することとあります。地方において、しごとがひとを呼び、ひとがしごとを呼ぶとして、ひとを呼び込む好循環を創出し、住みよいまちづくりを目指しています。

一方で、雇用の創出を企業側からみた場合、採用、継続的な雇用には企業の黒字が不可欠です。しかしながら、法人税申告をしている約260万社のうち黒字申告割合が約3割の現状では、積極的に採用し、採用を続けていくことが出来る企業は限られるでしょう。

地方創生総合戦略では地方の雇用、人口増加に向けて数値目標KPI(重要業績評価指標)を設けることが義務付けられ、効果を検証、結果を重視するものとなっています。政府関係機関の地方移転推進や、平成27年度につづき、平成28年度の地方創生関連予算の概算要求も大きく、2兆円規模となっており、安倍政権の地方創生にかける本気度が伝わります。しかしながら自治体の取組、官民連携だけでは、計画を達成することは難しいでしょう。

中小企業が利益体質となることこそが、雇用の創出、企業の成長、引いては地域活性化、住みよいまちづくりにつながります。中小企業の業績改善が地方創生であり、経営者こそが地方創生の担い手です。地方に住まう子どもたちの未来のためにも中小企業経営者にがんばってほしいと考えさせられる地方創生です。

※「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」から発表された「消滅可能性都市」は、2010年から2040年までの間に、人口の「再生産力」を示す20 – 39歳の女性の人口が5割以下に減少する市町村をいう。
山形県内では35市町村のうち28市町村が「消滅可能性都市」でした。該当しなかったのは、山形市、東根市、寒河江市、長井市、米沢市、山辺町、高畠町でした。

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