短期前払費用の特例の活用(2017年_6月号)

短期前払費用の特例の活用(2017年_6月号)

監査2部 チームマネージャー 税理士 髙橋 克徳

地代、家賃、賃借料など、継続的な役務(サービス)の提供を受ける場合、契約書を取り交わすものですが、その対価の支払い方には月払いや年払い、振込や小切手、手形払いなど、様々な方法があります。資金繰りの状況や損益に与える影響なども考慮して、自社にとって最適な方法を選択したいものです。

そもそも前払費用とは、継続的な役務の提供を受ける場合、未だ提供を受けていない役務の対価として前払いした額を言い、適正な期間損益計算の立場からすれば支払った時点で資産計上し、その後役務の提供を受けるに伴い、費用に振り替えていくものです。

ただしその一方で、企業会計では重要性の乏しいものについては本来の厳密な会計処理によらず、他の簡便な方法によることも認められています(重要性の原則)ので、その原則により、前払費用として支払った金額のうち、1年以内にサービスの提供を受けるもの(「短期前払費用」)については、重要性がないとして支払時点で全額を損金に算入することも認められています。ただし次の要件を満たしている必要があります。

1.一定の契約に従って継続的に役務(サービス)の提供を受けること
2.役務の提供の対価であること
3.翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
4.実際に支払いが済んでいること
5.毎期継続して同様の会計処理を行うこと

以上を踏まえ、事例を見ていきましょう。

【3月決算法人での一例】
①土地賃借に係る地代(4月から翌年3月分)を毎年3月末に一括で支払う
  → ○
②土地賃借に係る地代(4月から翌年3月分)を毎年2月末に一括で支払う
  → ×:翌年3月分が支払日から1年超のため
③4月から翌年3月までの外注費や顧問料を毎年3月末に一括で支払う
  → ×:原価的要素のものや等質等量のサービスでないものは対象外
④雑誌の年間購読料(4月から翌年3月分)を毎年3月末に一括で支払う
  → ×:物品購入であり役務提供ではない
⑤年払契約のシステム装置のリース料(4月から翌年3月分)を毎年3月末に一括で支払う
  → ○

短期前払費用の適用は、その時点で実際に支払いがなされていることがポイントですが、「支払い」には小切手や手形の振り出しも含まれます。小切手や手形は、期末時点で未決済であったとしても“既に支払ったもの”に当たるため、「短期前払費用」の特例適用を受けることが可能です。もちろん消費税においても全額が課税仕入の対象となります。
決算対策も含め、自社の契約状況が現状に即しているかどうか、年に一度は確認するようにしましょう。ただし、当然ながら短期前払費用の適用は、契約書が完備されていることが前提です。

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