ROE経営とROA経営(2015_7月号)

柴田健一_あさひ通信ROE経営とROA経営(2015_7月号)

最近、新聞紙上に「経営目標にROE広がる」や「ROE改善期待」、「世界に通用するROEランキング」といったROEに関する記事が飛び交っている。

ROE<Return On Equity>は自己資本利益率=当期純利益/自己資本の式で表せるように株主の持分である自己資本でどれだけの利益を上げているかを示す総合的な指標である。日本の上場企業のROEは8%台と10%~15%の米欧勢と比べて見劣りするため、最近は市場の期待に応えてROE 10%以上を目標とする企業が増えているというわけだ。

「ROE経営」を掲げている企業の目標率は伊藤忠商事(15%)、三菱重工(10~12%)、日立(10%超)、新日本住金(10%以上)、キッコーマン(2ケタ)、アマダ(10%)などだ。

ROEは株主のお金を元手にどれだけ効率よく利益を上げたかを示す指標である。では、どうすればROEは向上するのか?①利益を増やす、あるいは②配当を増やしたり、自社株買いで自己資本を減らせばROEは向上する。しかし、②を実施した結果、過度に自己資本を減らしてしまえば企業の財政的安定を損ねることとなる。不採算事業からの撤退、不採算取引先との取引中止、不採算商品の撤去などをして①の利益率を上げるのがROE向上のための本丸といえる。

ROEは少なからず株式市場に影響を与える。その意味では大企業向けの指標といえる。中堅・中小企業の効率経営の指標としては、むしろROA<Return On Assets>総資本利益率=営業利益/総資本(総資産)の方が適しているだろう。つまり、「ROE経営」が株主資本による効率経営の指標であるのに対して、「ROA経営」は株主資本のみならず借入金等の負債も含めた総資本による効率経営の指標であり、会社全体の総資産を働かせてどれだけの利益を上げたかの指標である。

企業活動とは、調達した資金(自己資本+負債)を経営資源(ヒトやモノ)に投下して製品やサービスを生み出し、販売することによって投下した資金以上の資金を回収する活動と定義される。その意味では総資産の効率を測るROAの方が中堅・中小企業の経営効率の指標としては向いているだろう。

ROA(営業利益/総資産)は①付加価値/売上高×②営業利益/付加価値×③売上高/総資産と分解できる。つまり、ROA経営では
 ①より付加価値(粗利)率の高い商品を
 ②より少ないコスト(販売費+管理費)で
 ③より短期間に(総資本回転率を高く)
販売しようということになる。そのためには、自社が最も得意とし、核となる強みの分野に経営資源を集中し、無駄な資産を切り捨てて効率を上げていく、重点経営、選択と集中、持たざる経営が肝要となる。