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公益資本主義(2018年_2月号)

公認会計士・税理士 田牧 大祐

「世界で頻発するテロ問題を解決するには?」

この問題の解決策を独自の視線から提唱し、世界経済のルールを変える活動をしている原丈人(はらじょうじ)※1氏の講演に感銘を受けた。NGO団体オックスファムが昨年発表した「世界人口の半数36億人の合計資産48兆円と富豪上位8人の合計資産が同額」とする事例をあげ、現在の富の分配ルールである株主資本主義が行過ぎた結果が、テロ問題の原因である格差を生んでいるという。株主資本主義に変わる経済ルールは、松下幸之助氏の言った「企業は社会の公器」とする公益資本主義であるという。

公益資本主義では、富を企業に関係する従業員、取引先、株主、地域、地球に公正に分配する考えとなる。このルールによれば、株主への分配を重視するのではなく、環境に配慮し、従業員への分配を増やし、取引先とも適正な利益が出る取引を行う。特に株主、経営者と従業員の格差是正になるとともに、経済の好循環につながることになる。災害があればその地域への分配を増やし、従業員が特にがんばった年には従業員への分配を増やす等、状況に応じた柔軟な分配の考えが出てくるという点がさらに面白い。

「上場企業の不正、不祥事の原因は何か?」「企業の持続的な成長を阻害するものは何か?」これらも行き過ぎた株主資本主義の結果であるという。不正会計や食品偽装事件等の企業不祥事の原因は、株価最大化のためのROEを事業目的と誤解し、筆頭株主である外国人投資家による短期利益最大化のプレッシャーを受けた結果であるとしている(企業哲学、倫理が社内に浸透していないという大きな問題もあろう)。また、短期利益最大化のために研究開発費を縮小させ、企業の長期的成長を阻害しているとする。

6年前の決算短信※2の通期業績予想記載の柔軟化は、上場企業の経営者にとって正確な業績予想や下方修正という短期利益確保のプレッシャーから開放される画期的なことだが、これは実は原氏の活動の結果であったことをはじめて知った。今は上場企業の四半期開示の廃止に向けて活動をすすめているそうである。

私自身、上場企業の下請けをしている製造業経営者の方には、適正な利益を確保できるパートナーとなる他の得意先を探すことをお勧めしている。上場企業との取引は、下請法はあるものの、対等なパートナーとして取引がされていないと感じることがあるからである。しかし、原氏の場合は、その原因である経済のルールそのものを変えようという点で、そのスケールに驚かされた。
原氏は、公益資本主義の雛型は、三方良しの日本的経営であり、この日本的経営を世界に広げ、企業の健全経営、長期的成長ととともに、公益資本主義の富の分配ルールにより世界を平和に導きたいと締めくくられた。
三方良しの考えを経営理念に取り入れている中小企業は多い。今後さらに、「企業は社会の公器」という考え、新しい富の分配ルールである公益資本主義の考えを実践し、多くの中小企業に広めたいと感じた講演であった。

※1アライアンス・フォーラム財団代表理事、デフタパートナーズグループ会長、政府税制調査会特別委員、内閣府本府参与等。原氏の公益資本主義の考えは、所得拡大税制、設備投資減税、財政政策等へ取り入れられている。
※2証券取引所の適時開示ルールに則り決算発表時に作成・提出する、共通形式の決算速報

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