相続税の税務調査では、申告漏れが指摘される割合が他の税目と比べ圧倒的に高い。「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」(令和元年12月国税庁)によれば、実地調査件数12,463件に対して申告漏れ等の非違件数は、10,684件、非違割合85.7%となっている。中でも財産別の非違でみると、もっとも非違が多いのは預貯金で申告漏れ課税価格3,538億円の36%、1,268億円を占めている。
国税不服審判所のHPでは、納税者と当局が争った事例が裁決事例として公表されている。相続税関係でみると、預貯金が8件と最も多く、預貯金の名義、財産の帰属に関して争った裁決事例が掲載されている。
預貯金は、口座名義がはっきりしているのに非違となるのは、不思議に思われるかもしれないが、これは、口座名義人と実質的な財産の帰属が違うという点で問題とされるからである。
経営者や地主の方など、子どものため、妻のため、あるいは孫のためにと彼らの名義で預金したものが、相続税の調査の際に、相続財産(亡くなった方の財産)から除外されていると指摘されるのである。相続人が預金の存在を知らされていなかった、あるいは、当該口座の通帳や判子などを被相続人(亡くなった方)が管理していたなど、その実態か
らは口座の名義人への贈与は成立しないと認定されるケースは少なくない。
預貯金に限らず、保険、有価証券などでも、口座開設時の筆跡が問題となるケースもある。証券会社には口座開設時の資料も長期間残されており、被相続人(亡くなった方)の筆跡、被相続人所有の印鑑での押印では、問題になる可能性がある。
また、銀行には10年分の取引情報が保存されており、相続税の調査では、被相続人(亡くなった方)の通帳金額の大きな出金が、相続人などの通帳の入金となっていないか、その出入りを個別に照合される。
大きな資金移動や財産の名義変更をする場合は、当事者間の贈与契約や贈与税の申告を行うことが必要である。地主、農家など同居世帯では、特に財産の名義と実質的な財産の帰属があいまいなケースが多いようだ。
あさひ会計の相続サポートセンターでは、財産一覧の作成支援も行っている。
ご自身の財産や贈与について検討したいとお考えの方は、ぜひご相談いただきたい。