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継続と戦略のM&A vol.2(2019年_12月号)

株式会社旭ブレインズ  川口 潤

 
-今日の現実を理由に、
   明日の改革をためらってはならない-

 これは、ソフトバンクグループの会長兼社長である孫正義氏が、ツイッターでつぶやいた言葉です。この言葉が連想されたのは、先日、M&Aで会社を譲渡した元社長(以下「社長」)のお話を聞いた時のことです。

 その社長が譲渡した会社は、食品加工業を営み、設立から40年以上もの間、地域密着型経営を貫いてきました。しかしながら、高騰する原価、人材不足、社長自身の高齢化等々、悩みの種が山積み。社長はこれらの課題を抱えながら、事業承継に直面します。
 社内に社長の右腕となる役員はいましたが、個人が譲り受けるには会社の規模が大きく、金銭的に現実的ではありません。社長にはご子息がいらっしゃいましたが、負債が億単位で残っていることと経営者としての資質という観点から、社長ご自身が、ご子息への承継は難しいと考えます。
 社内での承継、親族承継、はたまた数年間は現状を維持すべきか?など、様々な選択肢を模索した結果、社長は仲介業者を通した第三者への承継(M&A)を検討していくことを決断します。
 ところが、M&Aに向け株価評価などを行っていた矢先、原価高騰のあおりを受け、会社の経営は大きく傾くことに。その結果、社長は鬱病を患ってしまうのです。
 M&Aは一時中断。まずは会社の経営を立て直すことが最優先事項となります。
「M&Aに踏み切るのが遅かったか。」
 その時、社長はそう思ったそうです。
それから2年。原価の相場が下がり、企業努力もあって会社はV字回復を果たします。しかしながら経営課題が根本的に解決されたわけではなく、社長はM&Aによる会社譲渡の検討を再開します。

 最初に手を挙げた会社は、海外に本社を構える企業。地域密着型企業として地元に根付き、地元取引先のニーズに応え続けてきた社長は、「相手が地域密着の本質を理解してくれるか」という不安を払拭することができず、成約には至りません。
 次に手を挙げた会社は、社長の会社の様々な経営課題を解決し得るお相手でした。同業ということもあってか社長同士の相性も良く、同じビジョンを描いていました。
 そして、相手探し再開から約1年後、そのお相手と無事に成約に至ります。
「うちの会社はこれまで、人も採用できないし、後継者もいなかった。会社の業績は悪く、病気にもなってしまった。ただ、置かれた状況のせいにして、会社の改革、会社を変えることを諦めなくて本当に良かった。」
社長はこう仰っていました。

 冒頭に記載した孫正義氏の言葉は、今日の日本経済を取り巻く環境下において、多くの中小企業に当てはまる言葉なのではないかと思います。
 そして我々会計事務所は、企業の改革や変化を単に見守るだけではなく、社長の声に耳を傾け、共に悩み、共に考えながら、経営課題の解決と企業の改革や変化に寄与することが使命なのだと心を新たにしました。

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