特定社会保険労務士 今野 佳世子
ほとんど育児本を読まない私ですが、息子が第一次反抗期「魔の2歳」となったのをきっかけに、『男の子の育て方』という本を読んでみました。親の考えを伝える効果的な方法として、紹介されていたのが、「わたしメッセージ」です。
「わたしメッセージ」とは、自分の意思を述べようとするときに、「わたし」を主語にした表現をすることです。「あなた」を主語にする表現は、相手に踏み込んでいく力があり、内容によっては相手を非難するニュアンスを強く感じさせますが、「わたしメッセージ」は、語り手の責任において考えを述べる表現となり、伝えにくいメッセージを相手に踏み込まずに伝えることができる、というのです。
×「いい加減に片付けなさい!」
○「きれいに片づけてくれるとお母さんうれしいな」
×「こんな時間までを何していたの?」
○「連絡もないし、心配していたよ」
「わたしメッセージ」が効くのは、家庭内だけではありません。天童市で開業されている精神科医・産業医の東谷慶昭先生の職場のメンタルヘルス講座を受講したときにも、「わたしメッセージ」による職場コミュニケーションの有効性が説かれていました。職場で、心の病ではないか、生活リズムが乱れているのではないか(メンタルヘルスの悪化の現れのひとつです)と疑われるメンバーへの声掛けをどうしたらよいか迷われるときには、「わたしメッセージ」をお勧めします。
×「○○君、どうしたんだ。元気ないじゃないか。なにかあったのか。」
○「○○君、最近どうも元気がないように感じられる。なにか心配ごとでもあるのかと考えてしまうのだが、私の思いすごしでしょうか。とても心配です」
我が家では、一時期、「保育園に行きたくない。ママがいい」とぐずっていた息子に、「わたしメッセージ」で「一緒に遊びたいけど、お仕事に行かなければならないの」というと、なんとなく納得したらしく、帰宅後に「さびしかった?僕、保育園に行ってたの。僕いるよ」と母を慰めてくれるようになりました。気を遣わせてちょっとかわいそうですが…。
〈参考文献〉
『男の子の育て方』 諸富祥彦著(WAVE出版 2009年)
『このたび「うつ」になりまして 誰でもわかる「職場のうつ」対策』東谷慶昭著(株式会社テンタクル 2010年)