「T H I N K 」( 考えよ)(2026年_5月号)

 「THINK」( 考えよ) はIBM の社是だ。初代社長のトーマス・J・ワトソンが社員に「自ら考えて仕事をすること」を求めて、このスローガンを掲げた。
日本IBM の正面入口には「THINK」の文字が掲げられている。

 各社の取締役会に参加させて頂くことがあるのだが、(1)財務の状況、(2)人事の状況、(3)総務事項、(4)営業の状況、(5)生産の状況、(6)その他(設備投資の状況等)が各担当者から発表される。例えば「財務の状況」では試算表をもとに科目ごとの対前年同期比較や予算比較が行われ、実績の著増減項目あるいは重要な予算差異については要因が述べられる。だが、その後が続かない。私は心の中で「だから何なんだ!」と叫んでしまう。データを並べるだけでは経営とは言えないのだ。

 代表的なマネジメントサイクルにPlan( 計画)、Do( 実行)、Check( 評価)、Action( 改善) のサイクルがあり、最後のAction を次のPlan につなげてPDCA のサイクルを回していき、最終的な目標達成につながるのだが、多くの経営会議にPlan,Do,Check, の後のAction がない。目標を立て(P)、実施し(D)、あるべき姿との差異を算出(C)するのだが、その後の手立て(A)がないのだ。
それでは経営と言えない。経営会議ではその手立てについて喧々諤々の論争があってしかるべきだ。
大抵の会議の場合は担当者の説明にふむふむと頷いて終わってしまう。役員の方々、管理者の方々にはもっと考えてほしい、もっともっと「Think」してほしい。それが会社を発展させる原動力なのだから。これはもちろんあさひ会計にも言えることだ。

 経営の神様と言われた松下幸之助氏も稲盛和夫氏も「考え方」こそが経営の根幹だと確信していた。
松下幸之助氏が倒産寸前の東方電機( のちの松下電送) に37 歳の木野親之氏を派遣したときも財政的支援は一切なく、木野親之氏は松下幸之助氏の「経営理念」だけを手に、数十億円の赤字企業を3年間で黒字企業に転換している。JAL を再建した稲盛和夫氏も同じく「考え方」を武器に社員の意識改革を通じてJAL の再建を成し遂げている。
JAL 再建の原動力となった「JAL フィロソフィ」は40 項目に上るが、稲盛氏のリーダー教育に参加した社員の中から各現場の10 名が選ばれ、「京セラフィロソフィ」をもとに会社経営から現場のサービスに至るまでの考え方をまとめた「JAL フィロソフィ」を策定している。稲盛氏はまさに「フィロソフィ」をもってJAL を再建したと言っていいだろう。文字通り「結果を変えるにはやり方を変えなければならない。やり方を変えるには考え方を変えなければならない。」のだ。

 とはいえ「考え方」に自分の価値観が入ってしまっては普遍性を持たない。興味深い事例がある。
「フェラーリ裁判」だ。2700 万円のイタリア製スポーツカー(フェラーリ)を役員車として法人で購入したのだが、税務署が「社長の趣味であり経費ではない」と否認したのだ。しかし最終的には“経費として認められた” という税務裁決だ。

 おそらく税務署は背景として「高額なフェラーリは会社の経費として認めてはならない」という“価値観” をもって判断したのだろうと推定される。
しかし、経費として認められるか否かは、その車が高価か安価かではなく、事業の用に使われていたかどうかの一点に掛かっているのだ。いわゆる経費の原点とは何かという視点だ。このフェラーリは実際に業務で使用されていた証拠があり、裁決では経費として認められた。

 「考える」には判断基準が必要であり、物事の原点を知らなければならない。本来は「どうあるはずなのだ」という視点を持っていなければならない。仕事とは何か?組織とは何か?経営とは何か?人生とは何か? 「どうあるべきだ」という自分の価値観で判断してしまうのは危険かもしれない。

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