わくわく改善(2025年_5月号)

㈱長栄精密の「わくわく改善発表会」に参加してきた。㈱長栄精密は従業員数 99 名、印刷機械や半導体装置の精密部品の製造に取り組む企業だ。

「わくわく改善」を指導する桑原茂先生は、2010 年中国にある日系企業に社長として赴任、従業員 1000 名と 2 年半掛けて面談したという。面談では上司や仲間への不満の声が多かったが、多くはコミュニケーション不足や理解不足からくる誤解だったという。このような状況を変えていくために桑原先生は「わくわく改善」を編み出して導入していくことになる。その骨子は次の通りだ。
➀  4人組の小集団活動…メンバーは組織横断的に各所から集められる。全員参加だ。
➁ チーム名や活動内容は自分たちで相談して決める。…長栄でのチーム名は「 網 走 」「 使 徒 」「 淑女と僕達」「キレイキレイ」「越後屋」「イイヨ NEX」などだが、活動内容も「段取用台車制作」「製品を置く箱の仕切り改善」「第 3 工場外階段に手すり設置」「工場ジオラマ制作」「窓シートで食堂を明るく」などだ。活動は文字通りボトムアップで自分たちの職場を快適に楽しく働ける場にしようという取組みだ。
➂ 活動時間は就業時間内…長栄では金曜日 16:00から17:00の1時間で、もぐもぐタイムのためのお菓子なども用意される。

長栄精密も「わくわく改善」以前はリーマンショックを機にトヨタ生産方式のカイゼン活動を導入しており、年 2 回の改善発表会にはお得意様企業の管理職の方々や協力企業の方々、山形県の指導機関の役員の方も参加するなど、動画を使った発表スキルや改善内容で相当の評価を得ていた。
しかし、コロナの影響もあったのだろうが、トップダウンの下に実施されるカイゼン活動を負担に感じる社員も出て来て、振り返ってみると改善発表会のためのカイゼン活動になってしまっており、発表会の資料づくりの作業を家に持ち帰っていたりとそれまで隠れていた問題が顕在化し、改善活動を一旦中止したのだった。

論語に造詣が深い桑原先生は「わくわく改善」を論語で解き明かす。「知る者は好む者に如かず、好む者は楽しむ者に如かず」(知っているだけでは好きな人には及ばない。好きなだけでは楽しむ人に及ばない。)つまり、「何でも楽しんでやる人には敵わない」というのだ。だから、改善の最初のテーマを決めるのにも➀最初は、仕事そのものに関係のない身近なテーマ、➁メンバーの誰かの得意技や趣味を生かせるもの、例えば、「職場の入り口を“WELCOME”ムードに!」とかが良いという。1 テーマの改善期間は3カ月、チームのメンバーは1年で再編成するが、次第に本来の業務に関するテーマを選んでいけばいいという。

長栄精密はまだまだ初級段階なのだが、前回の発表会であるチームはメンバーの一人の「減量作戦」をテーマにしてそれを皆んなで協力して実現し、Before・After の写真とともに彼が如何にモテるようになったかを寸劇にして発表していた。

桑原先生は➀人は、楽しいと思えることが一番の成長に繋がる。日頃の仕事をいかに楽しむかを考えよう!➁“みんなで楽しもうぜ” というトップの信念が全員パワーに繋がり、会社を成長させる!➂小さくとも世界一を目指すことで、楽しさ、モチベーションが上がってくる!と教える。

わくわく改善導入当初、長栄精密でこんな出来事があった。注残が 7,8 日分たまり納期遅れを心配した経営幹部が「わくわく改善」の一時停止を幹部会議で提案したのだ。90名×月4h=3600hを生産の遅れに振り向けようという訳だ。しかし、幹部会の大半のメンバーは提案に反対したのだった。「わくわく改善」を楽しみに会社に来ている社員が沢山いる。
折角、他の部署の人たちと知り合いになれたのに会社の一体感がなくなってしまう、と。結局、「わくわく改善」は継続されたのだが、社員の頑張りで 3 カ月後注残は正常に戻っていた。

桑原先生の指導は訳あって 9 ケ月で終わってしまったのだが、行き着く先は “心の改善” だという。
いま、長栄の社員の目はイキイキし始めている。

 

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。