世界のお茶の専門店ルピシアの水口社長からお招きをいただき、パリの新店舗を訪れた。設計者は当法人の応接棟の設計者と同じ早稲田大学の古谷教授で、古谷先生もご一緒だった。
お店は知的で、日本風でもあり現代フランス風でもあり、なんとも洗練された空間だった。棚の扉には桂離宮の一二三(ひふみ)模様があしらわれ、通路部分は3枚重ねの擦りガラスに床下からライトをあて、真上の天井は短冊状のミラーを張り詰めて床の灯かりを映し、真正面のテイスティングルームの壁はフランス風の壁紙がアフリカの太陽のように真っ赤に染められていた。
その中でフランス人の男性社員が、日本人よりも日本人らしく、“おもてなし”の心で、優しく、丁寧に、試飲を勧め、商品を説明し、テイスティングルームへと案内していく。意外なことに、パリ店では紅茶よりも日本茶が売れ、十数万円の鉄瓶も売れているという。
ルピシアパリ店はフランスでも評判で、TVでも放映され、いくつもの雑誌から取材を受けた。もともとフランス人は日本贔屓なのだが、いま又、何回目かの日本ブームが起きているという。というよりも、日本独自の文化やサービスが「クールジャパン」と呼ばれ外国人を魅了しているのだ。
今回のフランス旅行では、ソルボンヌ大学出身の水口社長の案内でスペイン国境のバスク地方まで足を伸ばし、帰りはボルドーからフランス自慢の高速鉄道TGVでパリまで帰ることとなった。
ボルドー駅に到着すると残念なことにこの列車は20分の遅れ。掲示板を見ると5分遅れ、30分遅れ、1時間遅れと20本ほどの出発予定の時刻表のうち遅延する列車が約8割だった。ほとんどの列車が分単位で正確に出発する日本の鉄道のなんとレベルの高いことか。
「クールジャパン」という言葉は、かっこいい、感じがいい、洗練された等の意味合いで使われているが、いまやアニメやゲームだけではなくミシュランガイドの星の数で本場パリをはるかに越えた日本の飲食店や安心・安全・正確といった日本の生活環境までもがクールジャパンの対象だ。
日本人は物事を徹底的に突き詰め、こだわりをもち、道を究めようとする。それでいて大自然を畏れ、謙虚に調和を図ろうとする。日本という国はなんと不思議で魅力的な国なのかと、今回の旅行を通じ再確認したのであった。ルピシアパリ店が日本人の技や心をヨーロッパに広める窓口となることを願う次第である。