スティーブ・ジョブズの最後の言葉(2022年_6月号)

 

パーソナルコンピューター(パソコン)の概念を市場に普及させたアップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズは2011 年10 月すい臓癌で亡くなった。56 歳だった。

 私は、ビジネスの世界で、成功の頂点に君臨した。
 他の人の目には、私の人生は、典型的な成功の縮図に見えるだろう。
 しかし、仕事を除くと、喜びが少ない人生だった。
 人生の終わりにあっては、富など、私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。
 病気でベッドに寝ていると、人生が走馬灯のように思い出される。
 私がずっとプライドを持っていたこと、認められてきたことや富は、
 迫る死を目の前にして色あせていき、何も意味をなさなくなっている。
 この闇の中で、生命維持装置のグリーンのライトが点滅するのを見つめ、
 耳には機械的な音が聞こえてくる。
 神の息を感じる。死がだんだんと近づいている。
 今、やっと理解したことがある。
 人生において富を積み上げた後は、富とは関係のない他のことを追い求めた方が良い。
 もっと大切な何か他のことを。
 それは、人間関係や、芸術や、または若い頃からの夢かもしれない。
 終わりを知らない富の追求は、人を歪ませてしまう。私のようにね。
 神は、誰の心の中にも、富によってもたらされる幻想ではなく、愛を感じさせるための「感覚」を与えてくださった。
 私が勝ち得た富は、死ぬときに一緒に持っていけるものではない。
 私が持っていけるものは、愛情にあふれた思い出だけだ。
 これこそが本当の豊かさであり、あなたとずっと一緒にいてくれるもの、
 あなたに力を与えてくれるもの、あなたの道を照らしてくれるものだ。

                 ‥‥中略‥‥

 あなたの家族の為に愛情を大切にしてください。
 あなたのパートナーの為に、あなたの友人の為に。
 そして自分を丁寧に扱ってください。
 他の人を大切にしてください。

 

あさひ会計では京セラ名誉会長の稲盛和夫氏に倣って「社員の物心両面の幸せ」を 経営の根幹に掲げ、「仕事を通じて人の役に立ち、褒められ、感謝され、人間として認められ、誇りを持ち、そして仲間と一緒に事を成し遂げて 感動しあうこと」が“物心両面の幸せ” の「心」の部分なのだろうと思っていたのだが、死が近づいて人生を振り返ってみると、仕事中心の世界よりも、もっと身近な「思いやりや慰めや癒しや理解」こそが幸せの源泉であることに気づくようだ。
だとすると、仕事は勿論重要であり、私たちは仕事を通じ生活費を稼ぎ、蓄えもし、仲間と出会い、認められ、達成感を味わうのだが、ジョブズが言っているように、さらに重要なのはスケ
ジュールに流されず、自分が大切だと思うものに目を向け、人生の目的を見つけ、日々の生活を大切にして過ごすことなのだろう。
『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィーは自分らしい充実した人生を送るために、自分の生活の中心に「正直」「公平」「利他」など自分が最も大切にしたい価値観を置けという。

最近お会いした経営者で「今が一番幸せだ」とおっしゃる方がいた。学校を出てすぐ出稼ぎに行き、技術を覚え、数年後に故郷に戻り、建築業を始めた。その方はこれまで一回も喧嘩をしたことがないという。営業をしていないのに仕事を頼まれるとおっしゃる。今は地域の名だたる有力企業となった会社の社長を息子さんに譲って会長となり、3 世代同居でお孫さんに囲まれて暮らしている。10 年程前30 歳半ばの娘さんをガンで亡くしたのだが、今も毎朝、娘さんにラインで連絡を取っているという。

 

 

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