先進国の中でマイナンバー制を導入していない国は日本だけだ。過去に納税者番号制度(グリーンカード)でつまずいた政府による個人情報の一元管理が、皮肉なことに「消えた年金」問題で復活した。
番号制度で最も先行している国はスウェーデンだが、第一次世界大戦、第二次世界大戦に参戦していないため、国民の政府に対する信頼が厚く番号制度に対するアレルギーが無い。幅広い行政分野で活用されており、個人所得に関する情報も、国民の共有財産だとして有料で開示されている。
対極をなすのがドイツだ。かつて、ユダヤ人に焼きゴテで№を烙印したことで政府による個人情報の一元管理に抵抗があり、統一番号(あらゆる行政分野に共通の№)を導入せず分野別に異なる番号を使用している。
日本がモデルとしている国はオランダだ。導入プロセスや仕組みの工夫により、納税者No.から市民No.へと統一番号の導入を段階的に実現した。日本では2016年1月からマイナンバーの利用を「社会保障分野」「税分野」「災害対策分野」に限定してスタートする。
又、2017年1月からはインターネット上の個人専用サイト「マイナポータル」によって、各行政機関が持っているマイナンバーに関わる個人情報を確認することが出来るようになる。例えば、社会保険料や税金の納付状況が確認でき、各行政機関からのお知らせ情報も受け取れるようになる。将来的には源泉徴収票や生命保険料控除証明書、住宅ローン残高証明書、政党・教育機関からの寄付金領収書等確定申告に必要な証明書情報をポータル経由で入手してe-Taxで簡単に自主申告できるようになることが予想されている。
統一番号の先進国であるスウェーデンやオランダ及び英国の一部ではプレプリントされた申告書が納税者の下に送られてきて、本人がチェックした後、サインをして送付すれば正式申告が終了という状況にある。日本の税理士も確定申告の仕事が減ることを覚悟しておかなければならない。
マイナンバー制度の目的は①行政の効率化、②国民の利便性の向上、③公平・公正な社会の実現とされている。行政機関や地方公共団体では様々な情報の照合、転記、入力がなされているが、重複作業が削減されるなど、大幅な効率化が図られるとともに、行政手続きが簡素化されて国民の負担が軽減されることが期待されている。また、将来的には預貯金口座へのマイナンバー付番や医療分野への活用等が予定され、個人所得や世帯合算所得及び資産把握により、生活保護・年金などの社会保障負担・給付の公平化・効率化、そして医療費のデータ分析により医療費全体の削減につながることが期待されている。