中小企業のRPA成功のカギ(2020年_7月号)

 

「皆さんのRPA活用は大企業とは違うようですね。今日の話は初めて聞きました。」と、ITコンサルタントでもありIT分野の本を多数執筆するM氏から言われた。世の中のRPAは、「業務効率化」のために導入され、語られることが多いが、㈱ASAHI Accounting Robot 研究所(以下、ロボ研)で提供しているRPAやその顧客が使っているRPAは活用視点が違うようだという。

「ヒトとロボット協働時代を推進する。ロボットはロボットの得意な業務を、ヒトはヒトにしかできない業務を」をミッションとしてロボ研は活動している。そのミッションの意味するところは、自分たちが苦手なところはロボットに任せ、ヒトにしか出来ない業務に注力しよう、である。誤解を恐れずにいうと、ヒトが苦手な業務がロボットの得意な業務なのだ。

M氏に見せたRPAは、ヒトが忘れがちな作業に対して、一定のトリガーを設定し知らせるロボットや、ヒトが苦手な繰り返しの単純作業のロボットである。RPA導入の成功は、少しの作業を助けるロボットをたくさんつくることである。一人を助けるためのロボットでよいのである。

RPA導入は、仕事を奪うためではない。ヒトが忘れることを手助けし、ヒトが負担と感じる大量単純繰り返し作業、ミスの修正作業からの解放である。ヒトは、忘れるし、集中力が続かずミスをする。ロボットは忘れない、処理するものがあるだけ実行しつづける。

ロボ研の顧客である、とある会計事務所では、ロボットが繰り返しシステム内の資料を選択し、印刷をかける。ヒトがこの作業を一日繰り返すのは負担だ。また、日中、複合機を大量プリントで占有されると他の作業に支障がでる。今は、ロボットがだれもいない事務所で夜中にひたすらプリントしてくれ、朝、職員が出社する頃には印刷を完了させているという。

RPAセミナーで話をすると、まずコストと時間削減効果の質問をする経営者がいる。セミナーではいつもその思考をやめてほしいと伝えている。RPAで時間削減を目的に掲げると、結果、目指すは効果の大きいメイン業務の効率化、複雑なシナリオ、高額RPA導入へとつながり、イレギュラー業務に対応しきれず、エラーの大量発生を生む。大企業でのRPA導入がうまくいかない、実際は動いていないという話をよく聞くが、原因は同じであり、コスト比較の思考である。社内で活用し、多くの顧客が利用している中で、RPA導入を成功させる際の優先すべき思考はコストではない。ロボ研でのRPA開発のスタートは、作業代替による働くスタッフの時間創出、ストレスからの解放である。その対象は一人でも良い、スタッフの手助けをしようという思考が必要なのだ。

繰り返しになるが、RPA=業務効率化ではない。実感としては、スタッフを助けるRPAを導入し、その副産物として業務が効率化されるということだ。RPAはスタッフの時間を創出する。時間を手にしたスタッフが新しいチャレンジや顧客に思いをよせた仕事をしている。

 

 

 

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