事業は人なり(2017年_5月号)

shibata201703事業は人なり(2017年_5月号)

平成29年3月の有効求人倍率は1.45倍とバブル期以来26年ぶりの高水準だった。船井総研出身のコンサルタントから聞いた話だが、東京の会計事務所ではもう人を採用できないのだそうだ。それでいて、人が辞めていく、事務所内は絶対的な人手不足に陥り、所長先生はどうしたら良いのか分からずそのコンサルタントに相談に来るという。結論は、所内業務の効率化を図ろうと企てるのだがとても追いつかず、結局は採算性の悪いお客様はお断りするしか対処方法はないのだという。断られたお客様は、別の会計事務所を探すわけだが、以前よりも高い顧問報酬を提示されそれを受けざるを得ないらしい。

ヤマト運輸は、インターネット通販の急増で宅配便の人材が追いつかず、今年9月をめどに27年ぶりに最大20%の値上げをする方針だ。あらゆる業界に人材不足の荒波が襲ってくるだろう。そのあおりで値上げラッシュがおこる可能性が出てきた。

経営者として、業務の効率化は勿論のことまずは人材確保の体制を整えることだろう。新卒採用、中途採用、人材派遣や人材紹介、定年延長、高齢者雇用、在宅勤務等とあらゆる採用ルートを築くとともに、何よりも社内体制を固めなければならない。

ある社長様から聞いた話だが、最近、得意先の経営者から「何人か人を派遣してもらえないだろうか」と突然電話がきたという。詳しく聞くと「いやいや、5人ばかり一緒に辞められてしまって」ということらしいのだが、そんな話が一ヶ所だけでなくあちこちから聞こえてくる。一体、何が起こっているのだろうか。社内の雇用体制を固めるといっても、給料を上げれば済むという問題ではない。

働く人間にとって、給与や作業条件の改善は不満足感を減少させても、積極的な満足感を増加させる要因にはならない。仕事に対する意欲や情熱を維持するのは「達成感」、「上司や仕事仲間からの承認」、「仕事そのもの」、「信頼されているという責任感」などだとハーズバーグは説く。何よりも経営者の社員に対する深い愛情が雇用を維持する要なのだが、そのことを理解していない経営者が少なくない。

今村雅弘元復興大臣が、東日本大震災は「まだ東北だったからよかった」と発言して辞任したが、彼は東北に対して特に悪気は無かったと思う。ただ、被災者に心を寄せるという意味でもう一つわかっていない。上から目線というか、外見的というか、真の温かみが無いというか本質が判っていない。経営者にとっても社員に対する温かい目や深い愛情が真実のものでなければ、社員は去っていくだろう。これからは、顧客満足(CS)よりも従業員満足(ES)が優先する時代だ。

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