事業承継4つの道(2022年_4月号)

中小企業の事業承継問題は深刻だ。日本の中小企業は約380 万社といわれ、日本の企業の99.7%を占めているが、経営者の高齢化が進んでおり、いまや経営者の年齢のピークは60 ~70 歳代だ。しかも60 歳代の経営者の48.2%が、70 歳代の経営者の38.6%が後継者不在だ。このような状況の中で毎年約5 万社近い企業が休廃業・解散をしていくが、廃業事業者の61.5%が黒字だという。しかも、廃業理由の29.0%が後継者難によるものだ。このままでは日本の経済や社会を支える貴重な雇用や技術が失われていく可能性が高い。最もシビアな日本政策金融公庫の推計では、廃業予定企業が200.2 万件あり、実際に廃業となれば従業員数704.3 万人、付加価値額25.1 兆円、売上高110.3兆円が失われる。事業承継対策は日本経済の活力維持・発展のために不可欠と言える。

事業承継にはいくつかのパターンがある。➀親族内承継、➁社内の役員・従業員への承継、➂第三者へのM&A、そして➃資本と経営の分離だ。

➀ 親族内承継
日本の中小企業の事業承継は、心情面や所有と経営の一体的承継という見地から、親子を中心とした「親族内承継」が20 年前であれば事業承継全体の9 割以上を占めていたが、最近は6 割を切っている。近年では少子化が進み、そもそも継ぎ手がいない、継ぎ手がいても大企業の勤め人となっていて、役職に付いていたり、大きな仕事を任されていたり、子供の学校のこともあって簡単には継ぐことが出来ないといったことが増えている。
また、最近は後継者がいても経営者に向いていないと現経営者が親族への事業承継を断念する場合も多くなっている。従業員にとっても、取引先にとっても、肝心の後継者本人にとってもその方が幸せな場合もある。

➁ 社内の役員・従業員への承継(MBO)
社内の役員や従業員へ事業承継することは、経営能力のある人材を見極めて承継することができ、経営方針の一貫性も期待できるが、問題は多額の株式譲渡代金が絡むことだ。株式の評価が高い場合は後継者にとっては資金面で株式買取りが難しかったり、逆に株式評価が低い場合は、後継者は会社の負債(個人保証)も引き継ぐので事業承継のハードルを上げる原因ともなる。

➂ 第三者へのM&A
広く後継候補者を求めることができ、かつ、現経営者は会社の売却益を得ることができるが、経営理念や方針が一致しない、譲渡価額で折り合えないなど、候補者選びに時間がかかることがある。とはいえ廃業は、機械などの産業廃棄物の処分費用、建物の取り壊しや原状回復費用、従業員への退職金支払い、その他登記などの届出関係など手間と多額の費用がかかる。さらに何よりも社員の雇用を守れない、取引先に迷惑をかけるなどデメリットは大きい。
その意味では第三者へのM&A は雇用や取引先との取引関係を維持できるうえに、買い手側とのシナジー効果を発揮できる可能性が大きく、双方にとっても、廃業と比べれば日本経済にとっても圧倒的な利益をもたらすだろう。

➃ 資本と経営の分離
引退する経営者が、経営者になりたいという第三者を選び、会社の代表者に就任してもらい、経営だけを後継者に譲るというという手法だ。旧経営者はオーナーとなり配当金などの収入を得ながら老後資金を確保することが出来る。後々、後継者が人間としても立派で、経営者としての実力も兼ね備えていると判断できるのであれば、段階的に株式を譲渡しても良い。あるいはオーナーの地位を相続人に引き継いでも良い。問題は経営者になりたいという第三者がいるかということだが、メインバンクに斡旋を依頼してもいいし、従業員から選んでも良いし、公募する方法もある。

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