公認会計士・税理士 田牧 大祐
平成19年の夕張市の財政破綻により始まった地方公共団体(以下、「地方自治体」)の公会計制度改革ですが、すべての地方自治体に企業会計の考え方を取り入れた財務書類作成と笹子トンネル崩落事故に代表されるインフラの老朽化に関する更新、長寿命化等の計画作成が求められています。
地方自治体の公会計制度改革を総務省が強力に推進しているその背景には、公共施設や道路、橋梁等のインフラの多くが1970年代に整備され、50年が経過する2020年代になると、老朽化問題が現実化する一方、税収の伸びは見込めず、インフラの更新が困難な状況があるからです。日本の税収約90兆円の内訳は、国税6割(主に、所得税、法人税、消費税)、地方税4割(主に、住民税、固定資産税、地方消費税)ですが、市町村でいえば、一般会計歳入の3割から6割は地方交付税や補助金等、国からの依存財源に頼っており、国税の税収不足は、地方自治体の運営財源が確保できない事を意味しています。
国の財政収支に関しては、財務省が公表している『もっと知りたい税のこと』で、国を一般家庭に例えて分かりやすく説明しています。それによると、月収40万円の家庭で、月の要支出額が79万円(うち、ローン元金返済が19万円、田舎(地方自治体)への仕送りが14万円)、ローン残高は7,631万円という状況です。
また、国立社会保障・人口問題研究所のホームページには、2010年以降5年毎の人口推移が公表されています※。2010年の日本の総人口128,057千人に対して、2040年は107,276千人(83.8%)です。しかし、税収に影響の大きい生産年齢人口(16才から64才)に目を向けると、2010年81,735千人が、2040年には57,866千人(70.8%)です。
地方自治体には、人口減少時代に即した運営が求められ、財政規模も人口に合わせて小さくなると思いますが、最大人口に合わせて整備してきたインフラをすべて更新していくことは難しいでしょう。人口減少時代に合ったインフラの更新が求められ、将来、私たちが当たり前に使っている道路、橋梁、トンネル、上水道、下水道が使えない地域が出てくる事も許容しなければならない時代が来るのかもしれません。
※参考までに、山形市でいえば、2010年254千人が2040年には209千人(82.4%)、山形県では1,168千人が835千人(71.5%)となっています。