つい最近も、コインチェック(仮想通貨取引所)から約580億円分の仮想通貨「NEM」が外部からの不正アクセスで流出するという事件が起きたばかりだが、ビットコインをはじめとする仮想通貨とは一体、何なのだ?そんな疑問を解き明かそうと、いま話題の『お金2.0』(佐藤航陽著、幻冬社発行)を読んでみた。難解で何度か読み返さないと理解できない本だが、技術的にはともかく、機軸の全く違う世界が経済をはじめとする既存の社会の枠組みを席巻しつつあることを感じ取ることができた。
仮想通貨は、過去に何度も不正な資金流出事件があって「詐欺で胡散臭い代物だ」という論調があるのだが、不正を誘発した技術的な問題や管理上の人的な問題と「革新的なテクノロジー」なのかどうかという本質を混同することは避けなければならない。著者は、円やドルのような「法定通貨」とビットコインのような「仮想通貨」とは全く違う仕組みで動いており、それは野球のルールとサッカーのルールのようなもので、野球のルールでサッカーを論じても意味がないという。
いま世の中で起こっている最もインパクトのある変化の流れは「分散化」だ。既存の経済や社会は「中央集権化」によって秩序を保ってきた。国家においては政府が、企業であれば経営者が、物流であれば商社が、情報の流通を握り、権力を集中させてきた。そして、そのこと自体が重要な「価値」だった。
しかし、現在は全員がスマートフォンを持ち、リアルタイムで繋がっているのが当然になり、モノとモノも常時接続され、オンライン上で人と情報とモノとが直接かつ常態的に繋がっているネットワーク型の社会に移行しつつある。そこでは「分散化」が進み、中央集権的な管理者からネットワークを構成する個人へ「権力」が逆流していく。この「分散化」の流れの中に、Uberも、ビットコインも、YouTubeもあるというのだ。
Uberはタクシー会社が行っている配車サービスを、個人のドライバー(副業でも良い)とお客さま個人をネットワークで結ぶアプリを提供して成功した。Uberは車を所有しているわけでもなく、ドライバーを雇っているわけでもないのに企業価値は5兆円以上だ。
スマホから誰もが簡単に売り買いが楽しめるアプリ「メルカリ」は日本初のユニコーン(未上場で評価額10億ドル超)だ。いまや世の中には企業が介在せずに個人間で取引(経済)が完結する仕組みがあふれ出ている。
仮想通貨は国家や中央銀行とは離れ、特定のネットワーク内で独自の通貨を発行し、送金や支払を可能にし、ユーザーの活性化に繋がるコンテンツをアップし、独自の経済圏を作りだそうとしている。