会社と経営者のための「損害保険・生命保険」の戦略的活用法

株式会社財務サポート 猪俣 哲夫

 経営者が事業に投資したお金を回収する手段は、役員報酬・配当金・退職金・株式売却の4つ。このなかで税制上最も優遇されているのが退職金です。役員報酬は累進税率のため最高税率は住民税所得税合計で55%、高所得者ほど高税率になります。
一方、退職金は通常の給料や賞与に比べて優遇されています。これは、長年の勤務に対する報奨としての性格や、退職後の生活保障を考慮しているためと考えられています。

<参考>
勤続年数      20年  30年     40年
退職所得控除額 800万円  1,500万円  2,200万円

<退職金の税額試算>在任40年の場合
退職金額    税金 手取額    実効税率
2,000万円   0  2,000万円 –
3,000万円  約78万円 約2,921万円   2.6%
5,000万円  約454万円 約,4545万円   9.0%
*税金:所得税 復興特別所得税 住民税の合計額

退職金額は合理的な金額の範囲内でしか損金として認められませんので、金額については十分な検討が必要です。
ここからは保険の活用をからめてみていきます。「万一の場合」に備え、かつ計画的な退職金財源準備として最も有効なのが実は生命保険です。生命保険を活用すれば①損金で積立、②死亡・勇退退職金を確保、③利益を確保、④保障・財源・利益を計画的に準備でき速やかな現金化が可能です。
①~④を満たす保険として逓増定期保険があります。保険料が損金計上でき、確定した解約返戻金と死亡保障が確保されます。期間が10年以内の場合は早期に解約返金が増える逓増定期と全損型定期の活用が主流です。

<具体例>
社長60歳(男性) 勇退70歳 退職金5,000万
【1/2損金タイプ】 N社 逓増定期保険での試算
保険金5,000万円  保険料/年払 5,353,150円
保険料のうち 2,676,575円を毎年損金計上
★10年後(70歳時)の状況〉
A:保険料累計  5,353万円
B:資産計上額  2,676万円
C:解約返戻金  5,024万円
D:解約返戻率(C/A)93.8%
E:解約時益金(C-B)2,348万円

以下、退職金準備に生命保険を活用する際のポイントをいくつかご紹介します。
◇複数の会社から退職金が支給される場合は、それぞれで退職所得控除を計算します
(一定の計算方法があります)
◇退職金(の一部)として現物支給ができます
 勇退時に個人名義に変更することで、保障を個人が継続することが可能です
◇役員退職金規定の備えが重要 (届出不要)
規定で税の優遇と法的保護が担保されます
◇解約返戻金は緊急資金として活用できます
◆死亡退職金(法人)と死亡保険金(個人)の2つの非課税制度があります
◆死亡退職金は民法上「受取人固有の財産」*退職金規定で受取人を指定できます
◆解約の他に減額の取り扱いも可能で勇退時期と解約金ピーク時がずれた場合の対策として有効

保険の詳しい説明ご相談は(株)財務サポートまで、税務に関してはあさひ会計までお問い合わせください。

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