会社と経営者のための「損害保険・生命保険」の戦略的活用法~第4回~(2018年_9月号)

株式会社財務サポート 猪俣 哲夫

 
経営者の死亡保障や退職金準備として「逓増定期保険」と「長期定期保険」が広く浸透し活用されています。「逓増定期保険」は資産形成効果重視で短期間での計画的財源準備に適しており、「長期定期保険」は保障と資産形成効果のバランス重視で中長期に亘る財源準備に適しています。
今回はリスクへの備えの視点で【長期定期保険】に焦点を絞り主な活用例を紹介します。

◆そもそも長期定期保険とは?
定期保険は保険期間が定められ満了時の返戻金はありませんが、長期定期保険は満了時を95歳や100歳等に設定した保険期間が長い定期保険のことで、長期平準定期保険ともいいます。保険期間が長いほど保険料と解約時の返戻率も高くなる為、税務の取扱は一定の基準で1/2損金と全損に区分されています。

◆長期定期保険の主な活用方法(効果)は?
生命保険は加入してすぐ商品価値が生まれるものではありません。保険金等の支払事由があって初めて商品価値が生まれます。
保障(死亡保険金)と資産形成効果(解約返戻金)及び受取時の保険差益(雑収入)を経営にどう活かすかがポイントとなります。

① 事業保障に備える
経営者の万が一の時、売上減少や債務返済、固定費のカバーに死亡保険金が役立ちます。

② 退職金に備える
解約返戻金を勇退退職金に充てられます。
解約返戻率の高い期間が一定程度続く為、勇退時期の変更にも対応可能です。
また、死亡退職金として保険金を充てることもでき、予測不能な相続発生にも長期間対応ができます。さらには、退職金支払いによる赤字転落を防止できます。
*「役員退職慰労金・弔慰金規程」で死亡退職金の受給権者を定めておくことをおすすめします

③事業承継(相続)に備える
突然の相続発生は以下のリスクが顕在化することがあります。
自社株の分散により経営が不安定に・・・
遺産分割協議でもめることも・・・
相続納税資金が不足するかも・・・

死亡保険金は自己株式取得財源として活用することもできます。会社が自社株を買取ることで、後継者は納税資金を確保し、株式の分散を防ぐことができます。
なお、自社株買取には財源規制があるため、買取資金と分配可能額両方の準備が必要になります。
*自己株式取得は「分配可能額の範囲内」という会社法上の財源規制がある(会社法461条)
*会社保有の自己株式は議決権がないことに留意

〈長期平準保険のイメージ〉

自社株対策については、新事業承継税制の活用も含め事前に株価の算定、承継計画など総合的な幅広い検討が必要となりますので是非一度担当者にご相談下さい。

    

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