仙台市若林区六丁目に美味しい野菜レストランがあると聞いて友人家族と出かけた。お店は11:30から15:30までのランチタイムのみの営業で、ビュッフェスタイルをとっており、お一人様1,555円の料金設定だ。予約していったのだがお店は満員で少し待ってくれという。連日満員とのことで毎日かなりのお客様をお断りしているらしい。窓が広く明るいというか温かい雰囲気のお店は全部で69席、60種類以上の料理が次々と運び込まれてくる。
何かが違う、この雰囲気は何かが違う。料理を運ぶ人、食器を下げる人、そしてお客様、みんなが微笑んでいる。厨房の中からも活気が伝わってきて、お店全体が元気な中にも、柔らかで、解放的で、そして優しい時間がゆっくりと流れて行く。
90%のお客様はアンケートに「知らなかった」と答えるのだそうだが、このレストランで働くスタッフの3分の2は障がいを持っている方たちだ。作業を一つひとつ分業して特化すれば障がい者も立派なプロになるという。むしろ障がい者の方が一つのことを極めることを得意として熱中しやすく、いわゆる「職人気質」だという。
材料となる野菜は自社の畑のもののほか、提携農家から従来は形が悪いだけで捨てられていた野菜を仕入れ、野菜カッターなどの機械は使わずに手間を惜しまず、心をこめて、手切りで丁寧に料理している。健常者も障がい者と一緒に働いていると優しくなり、逆に癒されるのだという。
六丁目農園を運営している株式会社アップルファームでは知的障がい者15名、精神障がい者21名、身体障がい者5名の計41名の障がい者を雇用している。レストラン21名、農場14名、カレー屋6名の構成だが、全員が名刺を持っている。なかには生まれて初めて名刺を持ったという人もいたようだ。
厚生労働省の調査では、働く障がい者に対する月額給与の全国平均は約13,000円、因みに山形県は月額9,911円と全国最下位だ。㈱アップルファームは障がい者に最低賃金以上の時給を支払っている。月額にすると勤務時間によって違うが4万円から14万円になるという。もちろん全国平均を圧倒的に上回っている。国等からの障がい者年金もあるので、ここで働く多くの人は立派に自立できる。
渡部哲也社長は、ここでの働き方を全国に広めていきたいという。現在の福祉業界では、障がい者が主役だということを認識していない場合が多いのだそうだ。ちゃんとした賃金を払って、かつ、企業としてのビジョンもある、障がい者も生きがいを持って働ける、お客様も喜んでくれるそんな会社を全国に広げたいという。今回の訪問は渡部社長の共同経営者である粕川博史さんに案内して頂いたのだが、粕川さんは山形出身であり、誇らしく感じたのだった。