期待の大きい新年を迎えているが、一方、消費税のアップ、TPP交渉、日中・日韓問題と課題の多い年でもある。
今回は、前回の韓国問題に続き中国問題について、東大卒業後、中国留学の経験もあり、3,500名を超える中国人の人脈を持つ近藤大介氏の著書を下に探ってみた。
中国は今や世界第2の経済大国だが、順風満帆とはいえないようだ。人件費の高騰、人材不足、脆弱な民営企業、権力闘争、蔓延する汚職等の腐敗、毒食品にニセ商品、大気汚染、水不足と水汚染、膨大な地方債、少子高齢化、続発する暴動・・・・これらは1992年に鄧小平が始めた「社会主義市場経済」のシステム疲労の産物に他ならないという。もはや「社会主義」と「市場経済」との矛盾は抜き差しならないところまで来ている。
この対立は、革命元老の子弟たちで人民解放軍を基盤とする「太子党」出身の習近平国家主席と中国共産主義青年団出身者で8,000万人の団員を背景とする「団派」の李国強首相との対立でもある。
習近平主席は「中国は古代から長く、世界一偉大な国家だった。いまこそ、毛沢東の建国の精神を受け継いで中華民族の偉大なる復興を果たすのだ」と意気込むのだが、その具体的政策には言及していない。出てくるのは「毛沢東時代の社会主義へ復古」である。
一方、李国強首相は「鄧小平時代の市場経済の進化」を目指し、鄧小平が深圳などに経済特区を作り改革開放の足掛かりにしたように「上海自由貿易試験区」を設定してリコノミクスの目玉にしようとしている。
「社会主義」と「市場経済」が習近平主席と李国強首相の綱引きによって引き裂かれている。今後の中国では、社会主義を堅持すれば経済が停滞し、市場経済を優先させれば、政治の民主化が必須となる。いずれにしろ、中国は、かつてロシアが「国家を解体する」という犠牲を払って乗り越えた政治改革に立ち向かわなければならないだろう。
また、13億人以上が生活し、熾烈な競争社会の中国大陸では自ずと性悪説で物事を考えるようになる。人やモノに対して日本のような「信頼関係」はない。頼れるのは自分だけであり、金だけである。さらに、中国の経済界には不動産バブルの崩壊、地方債務危機、そしてシャドー・バンキングによる金融危機といったリスクも潜んでいる。
このような状況の中で、今、中国の経営者たちに稲盛哲学が伝播している。「人として何が正しいか」「利他」といった稲盛哲学は中国人にとっても思想的武器になっているというのである。中国の盛和塾の塾生は1,500名に上る。経営者の私利私欲を超えた「利他の心」は中国に何をもたらすのだろうか。