公認会計士・税理士 田牧 大祐
反面調査は、税務調査を受けている会社(以下、「本調査先」)と取引関係のある先に対して行われる調査の事で、受けたことがあるという経営者の方もいらっしゃると思います。反面調査では、本調査先との取引と直接関係がないと思われる様な質問をしたり資料収集をしようとする調査官がいます。
反面調査時の対応として、以前実際にあった事例を紹介します。
本調査を受けている甲社のグループ会社である乙社にて、反面調査があった際の事です。
調査官A「社長、この建物は自社物件ですか?お客様との打合せはこちらでやっているのですか?」
乙社社長「そうですね、こちらでしていますね。今日もお客様が来ています。」
調査官A「先日、乙社は、グループ会社のもう1社の丙社と合併したようですが、なぜ合併したのですか?」
乙社社長「合併しましたね。」と少し経緯を説明。
田牧「Aさん、それは甲社の取引とどのような関係がある質問ですか?」
調査官A「関係があるかどうかは私が判断することです。」
田牧「いえ、Aさんが質問出来るのは、甲社の調査対象年度の所得に影響がある取引のみに限定されていて、さらに甲社での調査の結果、正確な事実の把握が困難だった取引の内容に限られます。もう一度聞きますが、どのような関係がありますか?」
調査官A「……」
調査官B「……」
―沈黙。
田牧「Aさん、先ほどの質問は、事務運営方針にある反面調査の際の『適正な課税標準を把握出来ない場合』にあたる質問検査権の行使ですか?」
調査官A「…違いました。今まではこんなかんじで、ざっくばらんに聞いておりましたものですから。あまり法律に詳しくないものですから…。」
その後、調査官Aは、甲社と乙社のある1つの取引について話し、その取引資料を確認し、当該取引に関係のない質問や無駄話はせずに帰っていきました。甲社の所得も変わりませんでした。
反面調査における質問検査権は限定されていますが、調査官自身がそれを忘れている場合や過去の経験上、何を聞いても、何を依頼しても良いと誤解している事があります。経営者にとって反面調査は、精神的、時間的な負担がありますので、反面調査が入った場合の早く終えるために、先手のこの一言。
「疑問の取引は何ですか?」