日本を代表する都市銀行はバブル崩壊前には13行あったが、今は3つのメガバンクに集約されている。一方、地銀(第二地銀を含む)も、人口減少や低金利の長期化で経営が厳しさを増しているなか、昨年11月には横浜銀行と東日本銀行、続いて肥後銀行と鹿児島銀行が、今年4月には大正銀行とトモニHDの統合が報じられた。単独で生き残るのには厳しい経営環境の下、金融庁の主導のもとに今後益々地銀の再編が続くだろう。そもそも日本には銀行が多すぎる。105行もある地銀は25行程度に集約すべきだという意見もある。
それでは、メインバンクが統合された場合、融資を受ける側の企業にはどんな影響があるのだろうか。三菱銀行に統合されたUFJ銀行の事例は参考になる。統合されたUFJの行員が冷遇されるのは銀行以外の業界の場合でも同じだが、統合されたUFJ銀行の融資先も三菱銀行の融資先と同じようには取り扱われていないというのである。融資の序列が下がる、取引条件が変わるということが起こっていると伝えられている。
取引先企業への融資の決定を下す審査部は、統合した側の出身者で主要ポストを占めるのが通常だろうから、新規融資の申し込みがあっても、統合した銀行の融資先とは十年以上の取引があり、先代の社長からの繋がりがあったり、かつて融資担当者として関わったりと会社の隅々まで解っており安心して融資に応じられることが想像される。しかし、統合された銀行の融資先に対しては、いわば新米者と同じであり、原則どおり厳しく対応せざるを得ないというわけだ。
では企業経営者はどう対処すれば良いのだろうか。要するに統合する(生き残る)側の銀行と取引をしておく必要があるのだが、とはいえ、どの銀行が統合されず生き残るかは判らない。UFJ銀行にしても誰もがまさか統合される側の銀行になるとは考えもしなかったのである。結局は、自衛のためには「取引銀行を増やす」しかないというのが結論だ。
これまでは取引銀行はあまり増やさず困ったときに助けてくれるメインバンクを明確にして大事にお付き合いするのが常道とされてきた。今後は多数の銀行とお付き合いするのが常道となるのかもしれない。
金融庁には県内一行という発想は無いらしい。競争維持のため県内に複数行は必要だと考えている。とすると地銀の再編は県境をまたぐ広域再編ということになる。また、地銀を傘下に加えようとするメガバンクの動きにも注意が必要だ。決断が早い外資系銀行の動きも気になるところだ。あるいは30行ほどの地銀同士の合併で第4のメガバンクが誕生する可能性もある。ここしばらくは金融機関の動きから目を離せない。