設備工事業を営む島根電工グループが商圏としているのは島根県と鳥取県だが、両県の県民所得は全国の下から2番目と最下位であり、人口も両県合わせて120万人強と山形県の人口を若干上回る程度であり、立地としては恵まれた環境にはない。
しかし、この中で島根電工グループの売上高は165億円を超えバブル期の約2倍を達成している。
高成長を続ける優れた企業にはいくつかの共通点があるのだが、島根電工を例に挙げて3つの項目について言及してみたい。
1.社員第一主義
島根電工の荒木社長は島根電工グループの特色をひとつだけあげろと言われたら、迷わず「社員を大切にすること」をあげるという。京セラの稲盛名誉会長が制定した京セラの経営理念の一つは「全従業員の物心両面の幸せを追求すること」だ。
「顧客第一主義」を掲げる会社が多い中で「社員第一主義」を掲げるのは誤解を生むおそれがあるのだが、大切にされていない社員がお客様を大切になど出来ないのだ。本当にお客様のこと考えるのなら、まずは社員を大切にしなければならないというのが国の内外を問わず優れた企業の共通した考え方だ。
2.自社の本当の商品
島根電工は設備工事屋ではないという。我々は顧客に快適な環境を提供するサービス業なのだという。島根電工では図面の通り配管すればいい、建築屋さんに言われたように電気を通せばいいというのではない、生活する人が喜んでくれるような快適な環境を提供するのが仕事なのだという。
同じようにスターバックスの元CEOハワード・シュルツは「我々が売っているのはコーヒーではない」という。スターバックスは職場でもない、家庭でもない「第3の場所」を提供しているのだという。
優れた会社の経営者は顧客が求めるウォンツの真実を掴んでいるのだ。皆さん方が経営する会社の本当の商品は一体何なのだろうか?
3.変化を恐れないDNA
島根電工もかつては他の設備業者同様、大型の公共事業やゼネコンの工事が中心だった。しかし、荒木社長は営業所長の頃から大型工事頼みの体制に危機感を感じ、ことあるごとに小口工事を増やすことを提案していたのだが、「そんな小口の工事はやるな」と会議ではいつも逆風が吹いていたという。
2001年「住まいのおたすけ隊」を創設、建設業からサービス業への発想の転換を図り今や一般家庭向けのコンセント1個からの「小口工事」が売上の約半分を占めるに至っている。
世界は日々変化し続けている。企業にとって現状維持はあり得ないのだ。恐れずに常に変化し続けなければ生き残りはない。