数百年に一度の大震災から10日目、テレビに映った被災地の青年たちは、「やるしかないっぺ」と復興への活動を始めていた。子ども達にも笑い声がもどっている。この国の人たちの底力はどこから来るのだろう。「日本人は冷静、不屈」と海外から賛辞が寄せられ、略奪や暴力も起こらず、秩序を保って対応する日本人の威厳ある姿に敬意と激励の論評が相次いでいる。
「ハリケーンカトリーナの時は普段1ドルの水が10ドルで売られたのに、日本の被災地では自販機が無料で開放されている」とアメリカのメディアが伝え、台湾メディアは「家を失った日本の被災者は、おにぎりと味噌汁を食べるだけで深くお辞儀をし、感謝している。先進的で豊かな日本の姿は消えてしまったが、確個たる強さと秩序は守られている。その姿は感動的だ。日本人は世界中から尊敬を浴びても足りない」と日本人被災者の態度に賛辞を惜しまない。
一方、日本に未曾有の危機が到来していることも間違いない。原子力発電所の事故も現時点では復旧の見込みは付かず、首都圏にも影響が広がっている。被災地の生産活動の停止と相まって企業活動の停滞と消費の冷え込みにより景気は再度大幅に後退することが懸念される。
まず東日本エリアの電力不足は相当長期化するだろう。生産体制の組み換え、業務体制の組み換えにより停電リスクに対応する対策を講じておく必要がある。原材料や資材の調達にも支障が生じることを想定しておかなければならない。また、最近のテレビコマーシャルが極端に減っていることからも察せられるように、消費者心理の委縮から生活必需品以外の外食や小売などの内需関連業種の販売にも大きな影響が出ると考えられる。
このような状況の中で、ある建機メーカーは震災直後から東北地方の外注先を訪れて被害の状況を把握し、復興のための増産態勢の準備を進めている。東京都は水道水から乳児向け規制値を超える放射性ヨウ素を検出したとして、乳児に水道水を飲ませないよう通知するとともに、翌日には24万本のペットボトルを確保し乳児のいる家庭に提供している。リーダーに必要なのは、正確な現状把握にもとづくスピーディな決断と実行だ。
長い人生の中では、誰に限らず何度も苦難や逆境に遭遇するものなのだが、そんな時には「長期的には楽観視せよ、短期的には悲観視せよ」という先人の教えが役に立つ。被災地の青年たちも、未来に復興した故郷を思い描いて、明るい気持ちを保ちながら現実の厳しさに立ち向かっているのに違いない。
“希望を失わず目の前のことに全力を尽くす。決して諦めない。”これが日本人の底力の源泉なのだろう。