日本経済の現況(2023年_5月号)

 

元経済企画庁調査局長小峰隆夫氏の「2023日本経済の現状と課題」という講演をもとに、私見も加え日本経済の現況をまとめてみた。
現在の日本経済はコロナの落ち込みからの回復期にある。GDP で見れば大分前にコロナ前を越え水面上に出ているのだが、運輸業とか、宿泊・飲食のような対面型サービスの一部業種では業績がピークから 4 ~ 5 割落ちたためダメージが大きく、最近ようやく元に戻った状況だ。

日本の景気は東日本大震災とか、リーマンショックとか、コロナショックのような外的な突発事件で景気が悪くなるが、通常期は世界経済の動向が輸出部門に表れ、鉱工業生産に影響し国内景気を左右するのが基本的なパターンだ。最近では輸出部門の鈍化が気になるところだが、エコノミストによれば今後の日本経済は年率 1%前後の穏やかな成長がしばらく続くとみられている。

マクロ経済的にはコロナの影響はほとんどなくなり、今後は世界の 2 大経済大国のアメリカと中国の景気の悪化がリスクと捉えられている。アメリカはインフレを抑え込もうと金利を上げているので経済活動が鈍化するのではと心配され、中国はゼロコロナという過剰規制で経済に悪影響を及ぼしていたが、これを一気に解除して爆発的に感染症が増え経済を阻害するのが心配だという訳だ。

日本はこれらの影響をまともに受けて輸出が鈍化し、生産活動が減退し景気にも影響するのではと心配されていた。しかし、IMF の世界予測ではアメリカの成長率もやや上がり気味、中国も上方修正しており世界経済の鈍化は意外と小さいのではと考え方を変化させている。

しかし、四半世紀に及ぶデフレ構造は日本経済に閉塞感をもたらし、一人当たりの平均賃金やGDP の伸びでは、主要先進国を大きく下回っている。しかも原材料価格の上昇や円安の影響により総合物価指数は昨年 4 月から 2%を超えているのだが、このインフレは国内の経済活動の活発化による国内インフレではなく輸入価格が上がることによって物価が上がる輸入インフレであり、生産性の上昇による賃上げ効果 0.6%、分配率上昇による賃上げ効果 0.8%ではカバーしきれず、実質賃金を 0.8%下げてしまっている。
そんな中で、少子高齢化の波を受けて人材確保の旗印のもと 4月以降大企業を中心に賃上げラッシュが続いている。生産性上昇の範囲内で賃上げをするのであれば何も問題はないのだが、企業利益を食いつぶしての賃上げを日本経済が今後どうこなしていくのか注視されているところだ。
一方、所得面での動きでは家計貯蓄率が注目される。日本の貯蓄率はコロナ前までは1~ 2%と非常に低い貯蓄率だったが、2020 年第 2 四半期に20%以上の貯蓄率になっている。これは理由がはっきりしており、政府が国民一人当たり 10 万円を給付したのだが、貰ったものの外食ができない、旅行もできないで使い道がなくそのまま貯めてしまった為だ。その後も使い道がないのと将来不安により 10%前後の貯蓄率が続いたため、日本の個人の金融資産は現在 2000 兆円に及んでいる。これが 500兆円に及ぶ企業の内部留保と相俟って金融機関は資金の運用先に困りそれが不動産業界に回っている。最近の新築マンションの平均価格は東京 23 区で 2 億 1千万円、首都圏で1億4千万円だという。東京はもうバブルの様相だ。

最後に少子化問題を考えてみよう。先頃、国立社会保障・人口問題研究所が「将来推計人口」を公表し、50 年後の2070年を予測している。 ➀日本の人口は3 割減の 8700 万人、➁高齢化率は約10%増え 38.7%➂14 歳~ 65 歳の生産年齢人口は3000万人減で4535 万人、➃人口に占める外国人の割合8.2%増で10.8%。少子化の加速は社会のあらゆる仕組みに影響する。移民問題の検討を含め、これらの条件下でも成り立つ日本を作っていかなければならない。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。