
14、5 年ぶりに旧知の若い公認会計士が訪ねて来た。今は49 歳と言っていたが、次々と新しいことにチャレンジするタイプで、初めて会ったのは2011 年の大震災の後だった。太陽光発電ビジネス( 電力会社が太陽光で発電した電力を18 年間、高価格で買い取るというスキームがあった)を斡旋し、その管理業務を自社で請負うビジネスの獲得の為、全国を走り回っていた。その後、大手監査法人系列の税理士法人に勤務し、部長まで上り詰めたという。1、2 年前にそこを退職し、今は特殊な案件の相続対策をおこなうスキームを考案して会社を起こし、相当な勢いで拡大中らしい。
最近、税理士界で話題になった事案に、女優で歌手の中山美穂さんの相続問題がある。中山美穂さんは昨年12 月に54 歳で不慮の事故で亡くなったのだが、相続財産が20 億円、相続税は10 億円といわれているなか、相続人の息子さんが相続を放棄したのだ。「相続財産がある」ことと、その相続財産にかかる「納税資金がある」こととは別問題だ。中山美穂さんは数々のヒット曲の作詞なども手掛けており相続財産の多くを「著作権」が占めていたと推定されている。日本の著作権の期間は、原則として著作者の死後70 年で、その70 年間の著作権の相続税法上の評価がおおよそ20 億円ということらしい。中山さんの場合、相続人はフランスに住む息子さんおひとりとのことで、原則では亡くなったあと10 ケ月以内に申告と納税を済ませる必要があるのだが、納税資金の工面が難しかったこと、財産が扱いにくいものだったことが相続放棄を選択した理由と考えられている。
死後70 年間有効とされる「著作権」は相続税法上それなりの評価がなされるが、いつ現金化されるのか皆目見当がつかない、ましてや10 ケ月以内に納税するにはよほど事前から準備をしていなければ不可能だろう。日本の相続税は過酷すぎると最近国会でも取り上げられている。
訪ねてきた若い会計士がこの問題に取り組み、打開策を見つけ、著名なシンガーソングライターをはじめ著作権の相続問題で悩む有名人が彼のところに押しかけており、今や事務所のスタッフが30 名を超えるという。ところが彼が言うには、これまでの経験で「30 名を超えると部下の掌握は無理だ、どのように管理すればよいのか」というのが彼の悩みであり、山形に訪ねてきた理由だった。
振り返ってみると、私もチャレンジすることが好きで、それがあさひ会計の発展を支えてきたと思うのだが、スタッフがまだ15 名の頃から全員に日報を提出してもらい、会計機を使って顧客と担当者を借方と貸方に分け、時間と金額を仕訳して、「顧客ごと・各人ごとの付加価値総額及び時間当たりの付加価値額」を、さらに総労働時間で付加価値を生み出す稼働時間を除して「稼働率」を算出し、それらを一覧表にして全員に回覧していた。
また、経営理念を策定したのもその頃だし、人事制度を構築したのもすぐその後だ。現在はENTOENTOの人事制度を使っているが、ENTOENTO を率いる松本順一社長は一緒に人事制度を学んだ仲間だ。
人事制度は一人一人の給与を決める道具であるが、本質的には一人一人に「会社があなたに求めていること」を伝えるツールなのだ。あさひ会計で言えば経営支援部、相続部、地方創生部、総務といった職種ごとに、そして一般職(1 等級から3 等級)、中堅職(4等級から6 等級)、管理職(7 等級から9等級)の3 区分ごとに計12 種類の人事評価シートを作ることになる。そして1枚の評価シートには「勤務姿勢」「知識・技術」「重要業務」「成果」の4 つフェーズごとにいくつかの評価項目を設定し、合計100点になるように設定する。評価は5 段階評価だが最高の5 点は、それを理解し、実践できたかだけではなく、それを部下や同僚に教えているかだ。
こんなことを14、5 年ぶりに会った公認会計士に話したのだが、お役に立つのであれば幸いだ。


