「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。」という言葉は、ビジネス界の“進化論”として定着しつつあると思う。“昨日の続きが今日、今日の続きが明日”では企業として存続し続けることは出来ないのだ。
最近、東京に出張して驚いたことがある。定宿にしているホテルで最近、新聞を置かないことにしたというのである。毎朝、新聞を読むことから一日が始まる私としては“びっくりぽん”だ。近頃は若い人に限らず新聞を読まない人やテレビを見ない人が増えている。東京の電車の中で新聞を広げようものなら、周りから白い目で見られる。というよりはハナから無視されるという雰囲気だ。
AQUA(旧ハイアールアジア)伊藤嘉明社長兼CEOの講演を聴いた。もう、新聞やTVにコマーシャルは出さないのだという。人々が情報収集する媒体が新聞やTVからスマートフォンやSNSへ移っているからだ。
伊藤社長は2014年3月に社長に就任したのだが主張は一貫している。「白物家電業界に革命を起こす」だ。三洋電機を引き継いだAQUAブランドは14年12月期に売上高355億円、最終利益は26億円と伊藤社長は就任1年足らずで18億円の赤字だった前年から黒字転換して結果を出した。
伊藤社長は、日本のモノ作りも環境の変化に適応できなくなってきているという。ロボットやAI(人工知能)が既存の大半の仕事に取って代わるというのだ。また、ビジネスの重心は北から南へ移行しており、北緯31度線より南に世界の富と技術が集中しつつあるという。英国のエコノミスト誌は、50年には世界のGDPの約半分が中国および東南アジアに集中すると予測している。
タイでは7000万人の人口がいるのだが、幼児を除けばほぼ100%の人がSNSを使っており、情報の獲得が半端でなく早い。ミャンマーでもすべてのことはスマートフォンから始まるといわれている。
環境の変化に適応できないものが滅びるのはビジネスに限ったことではない。リーダーや社員についても当てはまる。東南アジアでは英語、日本語、母国語が出来る人間が日本の半分の費用で雇える時代となっているのだ。
オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン博士は702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるのかを分析した結果、今後10~20年で総雇用者の約47%の仕事が消滅すると割り出している。
情報革命が言われはじめて約30年が経過しているが、今まさに、時代が根幹から変わり始めている。