稲盛和夫京セラ名誉会長がボランティアで主宰する経営塾“盛和塾”の第20回世界大会が、7月18日、19日の2日間、横浜国際会議場で約4,000名の塾生を集めて開催された。この大会では8名の方が経営体験の発表を行ったが、発表を聞いて如何に経営理念や経営哲学(フィロソフィ)が業績に直結しているかを実感させられた。
よく「“結果”を変えるには“やり方”を変えなければならない。“やり方” を変えるには“モノの見方、考え方”を変えなければならない」といわれるが、まさにこの“モノの見方、考え方”が経営理念やフィロソフィにあたるのだと思う。8名の発表者は共通して、社員に経営理念、フィロソフィを説いて浸透させ、全社員のベクトルを合わせることで業績を伸ばし、経営を変えた、まさに“経営は人なり”を実体験した経営者達であった。
お一人の発表者の話はこうだ。学校を出てから職を転々とし、30歳でスナックを開いたものの、頑張っても、頑張っても積み上がらない。その15年間は、「何のための人生か」「何のための経営か」を探し求めていた。今から13年前、46歳のときに稲盛塾長のカセットテープ“経営講話”に出会い、取り憑かれた様に聴き狂いをし、闇雲の先に一条の光明が射し込んできた。その後、自分の運命の筋書きにはなかった物語が展開する。「根室の人達は家族で食える回転すし屋を開いたら喜ぶだろうな」と、全くの素人だったが回転すし屋をオープンした。札幌にも進出し、いまや売上高23億円、従業員数476名の会社に発展している。「人間としての正しさを判断基準として経営し、全従業員の物心両面の幸せを追求する。併せて顧客の幸せの場として貢献する」が経営理念だ。
最後に稲盛塾長の講話があり、JAL再建を題材に日本の再生について話された。2010年2月、稲盛塾長は京セラから2名のメンバーを連れ、京セラフィロソフィとアメーバ経営を携えてボランティアでJALに出向いたという。
就任の挨拶では、「計画の成就は、只不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきに只想え、気高く強く一筋に」と中村天風さんの言葉を引用してどのような環境変化があろうとも必ず達成する「燃える闘魂」を説き、幹部、リーダー層、一般社員へと段階的に教育を行い、人間として正しいこと、つまり人間の「徳」に基づいた経営哲学の共有を通じて意識を変え、心を高めることで、企業の体質を変革していったという。
また、部門別採算制度では路線ごとの採算を明確にし、いまでは毎日すべての便の収支を把握している。JALは2012年3月期に2,049億円の営業利益を上げ、いまや世界のエアラインのなかでトップの収益力を達成している。
稲盛塾長はこの「燃える闘魂」と「徳」をもって、日本経済の再生も可能だと考えている。