真似のできない日本の技術(2026年_1月号)

バブル経済の崩壊後、不良債権処理の遅れ、デフレの長期化、少子高齢化の進展、規制緩和や産業の転換が進まない構造改革の遅れで日本は時代の変化に適応できず、「失われた 30 年」と言われる長期不況が続いた。GDP の伸びは平均0.7%、政策金利は 0%、賃金水準が長期停滞するなか、世界は「日本はもう終わった」と思った。しかし、日本の失業率は先進国で最低クラス、外貨準備高は着実に増加、日本の人々は比較的平静だった。
そのころ中国人評論家の柯隆 ( か・りゅう ) 氏が「日本経済が破綻しないのは技術があるからだ」と言うのを聞いた覚えがある。

今、日本は「技術力」で復活しようとしている。まずは半導体関連の技術力を見てみよう。確かにロジック半導体の量産では台湾の TSMC や韓国のサムソンが圧倒的な力を持っている。一方、日本は半導体製造装置の精密さや半導体素材の品質や供給力では世界屈指といえる。

これらはチップ製造に欠かせない素材や装置で日本の製品がなければ世界の半導体工場が止まってしまうレベルだ。

半導体以外でも日本は核心技術を握っている。

〇炭素繊維・・・鉄の 4 分の 1 の軽さで強度は 10 倍、錆びはない。ボーイング 787 の機体の半分以上に使用され、20%以上の軽量化と燃費改善に貢献。軽量化が必要なEVにも採用されている。髪の毛の 1/10 の細い繊維を何千本も束ねて編み上げ1400 層以上積み重ねていく。しかも、不良率は0.1%。

〇内視鏡技術・・・オリンパスが世界シェアの 70%を誇っている。がんの早期発見を向上させ、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術で低侵襲治療を可能にした。

〇ロボット技術・・・ファナックや安川電機の産業ロボットは、0.01 ㎜単位の精度で世界の製造業を支えている。さらに介護支援ロボットや手術支援ロボットなど人の動きを理解して助ける「共生型ロボット」を開発。精密さだけではなく人に寄り添う設計思想は模倣困難な強みとなっている。

〇立体圧延車輪・・・車輪を一体成型することで強度と耐久性を高め、事故リスクや騒音を低減。製鉄、鍛造、熱処理技術を融合したこの技術は日本製鐵の技術で他に類を見ない。新幹線をはじめとする鉄道の安全と静音性を支える。

これらの外でも日本の「ものづくり」は世界を凌駕する。直径 2 ㎜のベアリングでは日本製品の不良率は十万個に一個なのに対して最新の AI や数百億円を投じた設備をもってしてもドイツ製品の不良率は千個に三個。村田製作所がつくるセラミックコンデンサーは 0.4 ㎜ ×0.2 ㎜のチップでこの中に 600 層のセラミックが積み重なっている。通信基地局や 5Gインフラ、電気自動車でなくてはならない技術であり、村田製作所の世界シェアは 40%以上だ。このセラミックコンデンサーには欧州やアメリカの企業も挑戦したのだが、歩留まりの低さが壁となり日本の品質に届かなかったという。

一体、何が日本の技術を支えているのだろうか?
欧米では効率と利益を優先し、技術を KPI、歩留率、利益率といった数字としてしか見ていないのに対し、日本では現場で積み重ねた改善、そして人の命を預かるという使命感が技術の要となっている。

欧米では機械は壊れるという前提で、修理しやすいように設計し、壊れたら交換すればいい。それが合理的だと考えている。だが、日本は違う。
壊れないものを作るという前提から始まる。GMでは不良品は最後の検査で弾けばいい。日本はそもそも不良品が生まれないラインを作る。日本のものづくりは、単なる技術の積み重ねではなく、文化、価値観、哲学がそのまま形になったものだ。

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