賃上げラッシュの到来(2023年_4月号)

 

本年 1月以降、新聞を開くたびに満額回答とか、組合要求を大きく上回る回答とか、全社員に一律15万円支給とか歴史的物価高のもとで賃上げの記事が掲載されており、賃上げラッシュが続いている。
消費者物価は 22年通年で前年比 3% 増と 8 年振りの上昇となる。この結果、22 年の実質賃金は前年比 0.9%減と 2 年ぶりのマイナスだ。足元でも食品やエネルギー等の物価高は続いており、経営者側も、物価高に加え構造的な人手不足の中で優秀な人材確保やつなぎ止めに危機感を抱き、高い賃上げの表明となっている。

大手銀行は大卒初任給を5万円以上あげるが、大手企業や中堅企業の大卒初任給は今後、22 万円から 30 万円に上がるだろうと予測されている。すでにユニクロや旭酒造(獺祭の製造元)、森精機(工作機械)、sansan(名刺管理)などは初任給を 30 万円にした。日本の一人当たりの給与水準が世界に比し低いのは、パート・アルバイトなどの非正規雇用の比率が雇用者全体の 37%(2,101万人)と世界一高いためだが、パートの争奪戦が激しい小売業界においてもユニクロは国内のパート・アルバイトの時給を22年9月に2 割引き上げた。イオンもパート時給を社員並みにし、106 万円の壁を破るという。

しかし、7割弱が赤字申告の中小零細企業に賃上げの余裕はない。それでも日本商工会議所の調査では会員企業の58.2% は賃上げを実施するという。
「従業員のモチベーション向上」「人材確保・採用」「物価上昇への対応」がその理由だ。
それでは中小零細企業は賃上げラッシュにどう対処したらいいのだろうか。➀賃上げしない(出来ない)、➁大企業並みにとはいかないが、賃上げに対応する、➂大企業並みに賃上げを実施する、の 3つの方向性が考えられるが、➀の現状のまま賃上げを実施しないのであれば採用が出来なくなるばかりではなく、社内に転職予備軍を抱えることになる。まずは原材料や電力費等の高騰に対応する製品への価格転嫁を確実に実施し、賃上げ原資となる利益の確保を図ることだろう。➁の賃上げに対応する企業は、大卒初任給として基本給を 22 万円、月 20 時間の残業手当を含めて月額 25 万円超の給与としたいところだ。しかし、ベースアップにすれば賃金が固定化して賞与や退職金にも影響するため、とりあえずはインフレ一時金(賞与)を支給する方法もある。

今後 10 年間は採用氷河期といわれており、大手企業と中小零細企業との賃金格差は開く一方だろう。とはいえ就職に際しては必ずしも賃金の額だけで動くわけではない。働く人たちは「自分の好きな仕事で、自分を成長させ、周りに貢献したい」と思っているものだ。家族経営的な中小企業にはいわゆる大企業にない良さがある。 ⑴ マイナス評価をしない、 ⑵ 早期退職制度がない、 ⑶ 過激な出世競争がない、 ⑷ 役職定年がない、 ⑸ ジョブ型雇用がない等々であるが、今こそ中小零細企業は仕事の本来のあり方を会社経営の中心に確立するい
い機会だと思うのである。つまり「競争するのではなく教え合い、社員個々の成長を図って会社のレベルを上げ、それが会社の利益を押し上げ、個々人に還元される」という仕組みである。

実例がある。人事コンサルタントの松本順市氏は大卒後、アルバイトをしていた地元の魚屋に勤め、 「社員が教え合う」という人事制度を作り上げ、社員の成長を促して社員のレベルを引上げ、労働分配率を 67% から 37% まで下げたという。16 年後その魚屋はー部上場企業になっている。
WBC での日本の優勝はチームワークによる勝利 といわれている。実力主義(年俸)的にはアメリカの方がはるかに上だったにもかかわらず、栗山監督をはじめダルビッシュや大谷らが、周りに感謝し、教え合い、楽しむという仕事の仕方の究極の姿を実現出来た故の勝利だという。➂の大企業並みの賃上げを実施できる企業に対しては脱帽するしかない。

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