総務部 保科 志保
6月といえば梅雨の季節ですね。梅雨の時期になると、じめじめして外に出かけるのが億劫になってしまいますが、そんなときは家で読書はいかがでしょうか。
今回は私のおすすめの本をご紹介します。
伊坂幸太郎『ガソリン生活』です。
この本は平成23年11月21日~平成24年12月10日まで朝日新聞で連載されていたものが単行本化した作品です。当時私は、新聞を読んでは切り取ってノートに貼っていたものでした。
とてもめずらしいのですが、車が主人公のお話です。主人公は緑色のデミオです。
作者の伊坂さんは仙台在住のため、作品の舞台は仙台が多く、今回の物語の舞台も仙台です。同じ東北人として親しみが沸きます。
ストーリーは帯より「凸凹コンビの望月兄弟が巻き込まれたのは元女優とパパラッチの追走事故でした―。謎がひしめく会心の長編ミステリーにして幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。」
見どころは、車にも人間と同じように知性や感情があり、それが事細かに描写されています。例えば、信号待ちをしているときに隣になった車と会話して情報交換したり、踏切で電車の通過待ちをしているときもすれ違う電車と会話をします。乗り物同士話ができると思いきや、二輪車とは会話ができない設定もユーモアにあふれています。ただ、残念なことに人間の話は聞くことはできても、車が人間に話しかけることはできません。
物語は、自動車目線の話、人間目線の話等さまざまなエピソードが伏線としてはられ、クライマックスへ。読み終わった後はこれとこれが繋がっていたんだ!と思わずうなってしまいます。そして改めて、車に乗る時は大事に乗らないといけないなと思い、とてもほっこりした気持ちになります。
作者の伊坂さんも「車の気持ちを描ききった」と言っており、主人公である「緑デミオ」にも親しみを覚え、道を走っていたり駐車している彼に、つい「やあ、緑デミくん」と声をかけたくなります。我が愛車に対しても、やさしい気持ちになることは間違いありません。
同時におすすめしたい本が、寺田克也『寺田克也式ガソリン生活』(朝日新聞出版)です。これは新聞掲載の挿絵300点超を物語仕立てで再構成したものであり、小説とはまた別に新鮮な気持ちで読めます。
3月には『ガソリン生活』文庫本版が発売されました。文庫本の裏表紙には、単行本では読むことのできない新しいエピソードが載っています。この機会に是非お手にとってお読みいただき、車の気持ちを考えてみてはいかがでしょうか。きっとやさしい気持ちになると思います。