遺言書のすすめ(2020年_12月号)

 

山形相続サポートセンター 税理士・行政書士 菊地  克子

 

【相続の手続】

亡くなられた方の財産、例えばご自宅の建物、土地や証券会社で運用中の株式、銀行預金等々を遺された相続人の名義に変更又は解約することを相続手続と言います。この相続手続をする際、原則的には、

① 遺言書
② 遺産分割協議書

のいずれかが必要になります。

遺産分割協議の場合は、相続人が各県にまたがっていたり、揉める余地を与えてしまったりと手続きがスムーズに行かない場合が予想されます。

 

【遺言書の必要性】

1.ご相続人に意思能力があるとは限らない

揉めるから遺言書と思っていらっしゃる方が多いようですが、必要なのは、“揉めるから”だけではありません。

例えば、残された妻が認知症を患っていて施設に既に入所している場合など、後見人を付けないと遺産分割協議ができないケースがあります。

後見人の申立てから始まり、協議が終わるまでには相当な時間を要します。その間、銀行預金は凍結され、資産が眠った状態になってしまいます。

2.事業をされている場合

1の場合で、後見人をつけての遺産分割協議は、法定相続分を被後見人が取得することになります。これは、後見人は被後見人の財産を守らなければならないためです。また、残された相続人間で揉めてしまうと、調停で、遺産分割は法定相続分になる場合がほとんどです。

経営者の場合、財産に占める自社株式の割合が高い方が多いと思われます。遺言書を書かないままに突然の相続を迎えてしまうと、事業を承継予定の後継者に株式を集中させることが危うくなる場合があります。

経営者こそ、遺言書が必要と言えます。

【自筆証書遺言の改正】

自筆証書遺言が使いやすくなりました。その理由は次の二つです。

①財産目録は手書きの必要がなくなった
②遺言書を法務局保管することで“検認”手続が不要になった

財産目録は、パソコンで作成しても、登記簿謄本や通帳の写しを目録としてもよいことになりました。法務局のHPに例が載っていますのでご参考ください。

法務局に保管しない場合には、今までどおり検認が必要になります。検認をするには、亡くなられた方の全ての戸籍謄本と各相続人の戸籍謄本が必要であり、手間と時間を要します。法務局保管を選ぶことで手間が省けることは大きなメリットです。
相続手続きの確実さを考えると、公正証書遺言をお勧めしたいところですが、まずは、いつでも手軽に書ける自筆証書から始めるのがいいかもしれません。

山形相続サポートセンターでは、無料相談を受け付けておりますが、「遺言書があったらよかったですね」や、「遺言書があってよかったですね」とお話しする機会が多くあります。

必要と分かっていても、なかなかきっかけがないと作成に踏み切れないものです。そんな時にはぜひ、当センターにお声がけください。

 

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