あさひ会計でお願いしている産業医の先生は毎月『産業医通信』を配布してくれるのだが、これがなかなか面白い。例えばある月の『産業医通信』は「良い雑談は生産性を高める」という内容だった。脳科学研究者黒川伊保子さんの講演「雑談は脳の万能エクササイズ」からの抜粋とのことだが、1 分間で読める内容にまとめてくれている。
雑談とは「脳の中の記憶を引き出し、感情を込めて、言葉にして伝える一連の流れ」だが、右脳と左脳の両方を使う複雑な処理を含んでいて、これが脳の柔軟性や反応力を高めてくれるらしい。最近、世界的にリモートワーク(在宅勤務)が終了の流れにあるのも、リアルでの対面コミュニケーションの効果が再認識されたからだ。
◆雑談が組織にもたらす効能は次の 4 つだ。
(1)警戒心を薄め、心理的安全性を高める
(2)チームの結束力を高める
(3)新たな思考や発想につながる
(4)業務改善のきっかけになる
私も雑談中に、対話とは関連のない意外なヒントや新しい発想が浮かぶことが度々あり、不思議に思っていたのだが、肌感覚のリアルタッチでの対話は緊張をほぐし、集中力を高め、脳を活性化させるからかもしれない。
さらに雑談力を上げるために➀笑顔で話せる内容、➁普段から相手に興味を持つ、➂相手が興味を持ちそうな話題、➃適度に自己開示しつつ、相手の反応も見ながら柔軟に話題を変えることも必要であり、相手の課題を解決しようとしないことも大切だという。
「職場でパフォーマンスを発揮できている人」の約3分の2は「1 日 1 回以上の頻度で上司と会話」をしているという調査結果がある。雑談はあらゆる人間関係の入口であり、自分という人間を認めてもらい、その後の関係をより深く、強いものにするためのきっかけであり、人間関係の方向性を決定する重要なステージと言えるだろう。
『産業医通信』9 月号は、石鹸などの洗浄剤で体をゴシゴシ洗うのは NG という内容だった。
私たちの体には健康に関わる無数の菌が皮膚や腸内に存在していて、私たちの体を外界の脅威から守ってくれているらしい。例えばヒトの皮膚は通常、皮膚常在菌によって弱酸性が保たれており、食中毒や皮膚感染症の原因となる黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌がそもそも増殖しにくい環境を保っている。だから、洗浄剤で過剰に皮膚を洗ってしまうと、保湿に必要な皮脂や皮膚常在菌までも削ぎ落してしまい、肌が傷つき、アレルギーの誘発や細菌感染の原因となることがあるというのだ。
皮膚トラブル予防のためのポイントは、➀皮膚の汚れは汗や皮脂、角質の剥離成分(垢)など水溶性のものがほとんどなので汚れは十分な量のお湯で落とし、洗浄剤の使用は必要最小限に減らすこと。➁手洗い後は、適切な保湿剤(クリームやローション)を手全体に塗布することの2つだ。保湿剤は皮膚の水分を保ち、バリア機能を強化する役割を果たしてくれるという。
また、『産業医通信』に記載されている代表的な皮膚常在菌は次の 3 つだ。
◆「表皮ブドウ球菌」:肌の表面に住む善玉菌。皮脂や汗を分解し、弱酸性バリア(皮膚膜)を整え、肌を弱酸性に保ち、悪玉菌の繁殖を防ぐ。
◆「アクネ菌」:毛穴に住む日和見菌。普段は表皮ブドウ菌同様肌のうるおいを保ってくれるが、毛穴が詰まると爆発的に繁殖しニキビの元を作る。
◆「黄色ブドウ球菌」:肌がアルカリ性に傾くと暴れだす悪玉菌。荒れた肌、切り傷などで増え、膿やかゆみを引き起こす。黄色ブドウ球菌が勢力を伸ばすと日和見菌のアクネ菌も悪さをしてしまう。
この3者のバランスを保つには、上述した適切な洗い方が鍵となるのはもちろん、良い睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動も大事なのだそうだ。「皮膚は人体最大の臓器」であり、さまざまな能力を併せ持つ「スーパー臓器」だという。