株式会社旭ブレインズ 中小企業診断士 倉金 徹
令和2年7月豪雨では、山形県内でも最上川が氾濫して多くの住宅で浸水被害が出ました。台風と前線が作用することで豪雨が大規模化して観測史上最大規模の大雨が発生したり、過去に災害がなかった地域でも洪水が発生するなど、近年は過去の経験則があてはめられないような豪雨災害が多発しています。
災害時は、お客様や従業員の安全を守ることが第一ですが、会社や事業を守ることも大切です。地震や洪水などの自然災害をはじめ大規模停電や新型感染症のまん延など、災害等が発生したときでも事業を継続できるよう事前に対策しておくこと、万一、事業が中断しても早期に復旧できるよう手はずを決めておくことが、言わば「転ばぬ先の杖」となります。そのための「事業継続計画(BCP)」を策定している会社もあります。
しかしBCPを策定している中小企業は13.6%にとどまっており、普及しているとは言いがたい状況にあります(帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査2020年」)。
BCPを策定していない主な理由として、「策定する人材・ノウハウ・時間がない」が挙げられていますが、数ある経営課題の中で優先順位が低いというのが経営者のホンネではないでしょうか。
国は、中小企業の自然災害に対する事前対策を促すため、令和元年7月に中小企業強靱化法を施行し、「事業継続力強化計画」の認定制度をスタートさせました。中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けると税制措置・金融支援・補助金の加点などの支援策を受けられます。とくに「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」では、けっこうな点数が加点されるとのことです。認定を受けた特典としてPRに使える認定ロゴマーク付き!
これまでのBCPは、中核事業を特定して、復旧する目標時間を設定して、一刻も早く事業を復旧させること目指す、という内容でしたが、あまりにも文書量が多く、正直言って大企業向きという印象でした。
今回の「事業継続力強化計画」は、ターゲットが中小企業ですので、作り方はとても簡単です。①J-SHIS(地震ハザードステーション)や自治体のハザードマップを確認して自社が影響を受ける地震・洪水・土砂崩れなどの自然災害を想定する、②自然災害等が発生した場合の初動対応を検討する、③自然災害等に備えてヒト・モノ・カネ・情報という経営資源に関する事前対策を、今後3年間の取組み計画として記載します。認定を受けるために提出する「事業継続力強化計画」の様式はA4版で全4ページです。詳しい策定の手引きもダウンロードできます。BCPの策定はハードルが高いと感じるようでしたら、「事業継続力強化計画」がオススメです。
従業員を守り、取引先からの信頼を獲得するためにも、自社の事業の継続力の強化に取り組んでみてはいかがでしょうか。