優遇税制(2014_11月号)

あさひグループ代表 柴田健一優遇税制(2014_11月号)

新聞紙上では過去最高の利益を出している大企業の記事を毎日のように目にするのだが、中小企業の、それも地方企業の景況感は先行きが見通せずパッとしない。このまま消費税が10%に上げられたら売上が落ち込み、中小企業は益々苦しくなるという消費者に最も近い現場の声も、政治家や官僚にはなかなか届かないようだ。

日本経済にとって、今、緊急に実施すべきは勤労者の給料を上げて消費を伸ばすこと、及び企業の設備投資を促進することであり、この2つの項目に一定の目処が立つまでは消費税は上げるべきでないと私は考えている。

一方、税制においてはこの2つの項目についてかなり充分な配慮がなされている。設備投資をしたときに受けられる優遇税制は過去に例がないほど手厚い。例えば今年1月に新設された「生産性向上設備投資促進税制」では即時償却(取得年度に取得価額の全額を減価償却費にできる)又は最大5%の税額控除が適用可能だ。また、従来からの「中小企業投資促進税制」の対象設備で、さらに“生産性を向上させる” 設備であれば「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」が適用され即時償却または最大10%の税額控除が可能だ。

設備投資に関わる優遇税制は、「生産性向上設備投資促進税制」、「中小企業投資促進税制」さらに「上乗せ措置」と3つの制度が揃ったことで、設備投資をすればどれかの優遇税制が適用される可能性が大きい。設備投資を検討されている経営者の皆様には、是非とも検討いただきたい項目である。中には設備投資が完了する前に経済産業局の確認が必要な場合もあり、会計事務所に事前に相談いただければ幸いである。

一方、雇用者の給与を上げれば増加額の最大10%の税額控除の恩典が受けられる「所得拡大促進税制」の要件も平成26年度に緩和されている。この優遇税制の緩和後の適用要件は以下の3点である。
①当期の雇用者給与の増加額が基準事業年度の雇用者給与支給額の2%以上
②当期の雇用者給与の支給額が前期の雇用者給与の支給額以上であること
③当期の平均給与支給額が前期の平均給与支給額を超えていること

現在の景況感は期待ほどではないとはいえアベノミクス以降、残業代が増えたり、賞与が少しは多めに出たりと、この3つの要件は計算してみると意外にクリアできる可能性が高く、多くの企業でこの優遇税制の恩恵を受けている。まだ適用を受けていない企業様は是非一度計算してみていただきたい。中小企業は先行きに不安が残ろうとも、目の前のことに全力を尽くすしか発展の道はないと思う次第である。

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