公会計部 佐藤 司
全世界で1000万人が読んだ『ザ・ゴール』が、マンガ化されました。
原作の『ザ・ゴール』は、機械メーカーの工場長である主人公が、工場の業務プロセスの様々な問題を改善していくストーリーの小説です。日本で翻訳出版されると貿易不均衡が加速し、世界経済が大混乱してしまうことを懸念した著者エリヤフ・ゴールドラット博士の意向で、アメリカで1984年に発表されてから17年もの間、日本だけが翻訳出版を禁じられていたという、いわくつきの一冊です。
読んでみたいという興味があっても、本の厚さや文章量を見て、なかなか手が出なかった私ですが、マンガ化ということで、気軽に読むことができました。また、コミック版では舞台を日本の企業に置き換えているため、さらに読みやすくなっています。
物語の主人公は神奈川にある工場の工場長で、長引く採算悪化を理由に、突然本社から工場閉鎖を告げられてしまいます。3カ月間の猶予しか与えられず、半ば諦めかけていたところで、学生時代の恩師に偶然再会し、工場再建への意欲を燃やし始めます。主人公は、その恩師からヒントをもらいながら、工場の仲間たちと一緒に、一つ一つ問題点を改善していきます。多忙のあまり家庭を犠牲にしてしまい、妻との離婚の危機に陥ってしまったり、久々の休日に息子たちとのハイキングの最中に、工場の改善ポイントをつかんだりというシーンもあります。
作中では「全体最適」、「ボトルネック」など様々なキーワードが登場します。恩師はそれらのキーワードやヒントだけを主人公たちに与え、工場の皆が自らその意味を考え、解決策を考案し、実施していく様子が印象的でした。
原作『ザ・ゴール』で紹介されたTOC(制約理論)は、単なる生産管理の理論にとどまらず、一般的な問題解決の手法(思考プロセス)などの分野にも応用されており、製造業だけでなく、他業種の場合でも得られるものがあると感じました。
原作を読まれた方も、まだの方も、ぜひご一読されてみてはいかがでしょうか。