わが国のサービス産業は、GDPの7割、全就業者数の7割を占め、かつ、より一層の市場拡大が見込まれる重要な産業であるが、労働生産性においては諸外国のサービス産業やわが国の製造業に比べ極めて低く(米国サービス産業の5割程度)、わが国経済の足を引っ張っていると指摘されている。
そこで、経済産業省は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」を作成してわが国のサービス産業が付加価値の向上(売上増大)と効率の向上(コスト削減)を図り、特に地域産業の競争力強化に資するようにと補助金まで用意している。
ガイドラインでは、生産性向上に取り組むにあたってまず重要なことは「事業コンセプトの確立」であるとして、そもそも自社のサービスは何のためにあるのかといった経営における哲学や理念から入っている。といっても、身近な事例で説明がなされており頭が痛くなるというものではない。
事業コンセプトを考える上では①提供するサービス・商品の特性を見極め、対象とする顧客層(誰に)を特定する。②その特定した顧客にとって、他社や自社が提供した過去のサービスと差別化要素(何を)を作り出す。その上で③そのサービスを「どのような方法で」提供するかを定める。その際、サービスの内容について十分な情報提供を行うことがポイントである、となかなかきめ細かい。
事業コンセプトが決まれば後は「どうやって利益を出すか」を含めたビジネスモデルを検討することになる。
具体的な手法としては、次の10項目が掲げられており、実際の事例とともに詳細に解説されている。
(1)新規顧客層への展開、(2)商圏の拡大、(3)独自性・独創性の発揮、(4)ブランド力の強化、(5)顧客満足度の向上、(6)価値や品質の見える化、(7)機能分化・連携、(8)IT活用(付加価値向上向け)、(9)サービス提供プロセスの改善、(10)IT活用(効率向上向け)
事例は「ハイ・サービス日本300選」受賞企業や「ものづくり・商業・サービス革新事業」採択事業から抜粋されており、ユニークで革新性もあり大いに参考になると感じた。わが国の製造業は世界に冠たる生産性を誇っており、経済産業省はサービス業の生産性の改善策として、製造業のノウハウを取り入れて以下のような改善テーマも用意している。①5Sによる作業のムダ・ミス削減、②動線・レイアウト改善によるムダ・ミス削減、③計画的な業務割当による人時生産性向上、④事務改善によるコストダウン、⑤優良社員の言動の見える化による業務効率・品質向上 等々であるが、小売・卸売業も対象とされており、生産性向上に取り組まれることをお勧めする。