増田寛也元総務相は人口減少により全国で896の市区町村が消滅しかねないと試算している。東北ではなんと81.5%の自治体が消滅する計算になる。人口減少は出生率や少子化の問題として捉えられがちだが、実は人口流出、特に若年層の流出が大きな問題だ。
全国的には東京への一極集中が地方の人口減少を加速させている。東北では特に女性の首都圏への流出が目立つ。増田氏の分析によれば20歳~39歳の若年女性が半分になればその自治体は消滅する可能性が高いという。
山形県の市町村で人口が増え続けているのは東根市だけだ。何故、増え続けているのか?東根市では「中学3年生までの医療費無料化」や遊びセンター「けやきホール」の立体空間に大迫力の大型ジャングルジムをつくり「多少の擦り傷などは家庭にお持ち帰りください」と子供の冒険心や探究心を刺激するユニークな遊び場をつくり近隣から親子連れを呼び込むなど「子育てするなら東根市」のキャッチフレーズを現実のものにしている。
一方、東根市内の4つの工業団地には7000人を超える雇用があるという。さらにカシオが中国工場の仕事を日本に戻すと聞くや市長自らカシオに乗り込みカシオの東根工場への移管を要請したという。人口流出の最大の理由は地元に働く場所が無いことだというから東根市長の積極さが目を引く。
一般に、地方が生き残るための条件は、第1に安定した仕事を提供する「職場の創出」であり、第2に地域に活気や刺激をもたらす百貨店や映画館、大学、救命救急センターといった「賑わい」であり、第3に「子供を産み育てやすい環境の整備」だといわれているが、なんといっても産業を振興して雇用の場を増やすことが地方活性化の王道だろう。
雇用を増やすには企業誘致も重要だが、私は地元企業の黒字化を推進することが何よりも重要で効果があると考えている。今、全国の企業の3割しか黒字申告をしていない。いわば7割の企業が税金を納められないでいるのだが、税金を納められないのに雇用を増加させることは考えにくい。
あさひ会計の65%のお客様は黒字決算をしているが、かつて赤字だった企業が経営改善により黒字企業に転換することは可能なのだ。潰れそうだった企業が今や1億円以上の利益を出しているという事例は、数えられないほどいくつもある。1億円以上の利益を出すと金融機関をはじめ取引先や競合先など周囲のその企業を見る目が違ってくる。特に、社員の自信や自覚や愛社心が違ってくる。そうなれば優秀な新社員も入社してくれるだろう。九州の田川市では、行政と公認会計士や弁護士などの「士業の共同体」とが連携して中小企業の経営を支援している。