
㈱ディ・エヌ・エー (DeNA) の代表取締役会長南場智子氏の講演を聞いた。南場氏は DeNA の創業者として日本の IT 業界を牽引する日本を代表する女性経営者だ。ハーバード・ビジネススクール MBA 取得、マッキンゼー日本支社役員歴という国際的キャリアを持ち、女性初の経団連副会長、プロ野球オーナー会議議長など多くの“初” を切り開いてきた。
ネット事業からスタートした DeNA は、今や多角的な事業ポートフォリオと AI で経営判断する「AI ドリブンカンパニー」戦略を取っており、連結売上高は 1600 億円、従業員数は 2500 名に達している。
エンターテイメント事業のうちスマホゲームでは「ポケポケ」が中国以外の全世界で No.1 を獲得する大ヒットとなっている。ライブ配信では主に「Pococha(ポコチャ)」と「IRIAM(イリアム)」のアプリを中心に展開、ライバー(配信者)と視聴者が双方向で交流するサービスで日本最大級を誇っている。
スポーツ事業では単にベイスターズの野球チーム運営にとどまらず、横浜スタジアムの運営、さらに旧横浜市庁舎街区の再開発に参画し国内最大級のスクリーンを備えたライブビューイングアリーナやイマーシブな体験施設などもオープンさせ、賑わいのある街づくりを行っている。
南場さんは AI イノベーションによって全社を牽引し、AI による➀生産性向上、➁既存事業の強化、➂新規事業の展開を貪欲に展開している。南場さんがお気に入りなのは Google の NotebookLM で、指定した情報ソース(記事や YouTube など)のみを学習データとして利用することにより信頼性の高い解答を得ることが出来るが、例えば人事関係の内規を読み込ませて社員の質問に答えさせるとか、あるいは中小企業の社長が自身の経営理念や考え方を記した文章や特定の書籍を NotebookLMに読み込ませ、AI チャットボットとして社員に提供すれば、社員はいつでも社長の意図に基づいた判断基準を確認でき、社長は部下の質問に答える時間を経営者本来の業務に振り向けることが出来るという。さらに事業承継に際しては経営者の思いを後継者に伝える役割も AI に期待できる。
振り返ってみると私も事務所にいる時間のほぼ半分は部下からの質問に答えるために費やしているが、あさひ会計の経営理念や行動指針であるクレド、20 数年分のあさひ通信、それに『京セラフィロソフィ』、『心を高める、経営を伸ばす』( 稲盛和夫著 ) を読み込ませれば、AI が私の代弁者になってくれるので、部下の質問へ充てる時間が減って、もっと未来志向の仕事ができるのかもしれない。
ヘルスケア事業では AllM(アルム)社の医療DX を中核として遠隔医療・医療情報提携・医療ビッグデータ活用などのサービスを提供している。
オートモーティブ事業では JapanTaxi と共同で運営するタクシーアプリ「GO」は日本最大のタクシー配車アプリであり、全国で利用できる。
このほか DeNA が実際に導入、または注目している特定課題を解決する特化型 AI ツールに、AI 面接ツール「MiAI 面接」、商談化ツール「immedio」、自動応答 AI「zooba」、AI 工程管理「ものレボ」などがある。
南場氏は、特定業界に深い知識を持つ「ドメインエキスパート」と AI の知識を持つ「AI エキスパート」をマッチングさせることで業界特有の課題を解決し、それが新たなプロダクトやサービスを生み出しているという。ソリューション ( 解決 ) の数だけ新規事業の可能性があるというのだ。DeNAは、これら新規事業の芽を自社だけでなく、スタートアップと共に事業展開していく方針だ。
DeNA は、組織が人を使うのではなく、「人が組織を使う」「人が DeNA を使い倒す」という考え方を基本としている。そのため、採用では学歴よりも「面白がり屋」であること、つまり「好奇心」を持ち、何かを成し遂げたいというマインドを重視している。社員を起業家として捉え、彼らがDeNA というプラットホーム(土壌)を最大限活用して事業を生み出し、育てていくことを期待しているという。


