Paper freeの世界(2020年_11月号)

 

“paper free”、(株)ASAHI Accounting Robot研究所(以下、ロボ研)のラボ入口ドアには、こう記載してある。ロボ研ではRPA事業を開始するにあたり、紙を使わないことを謳ってスタートした。デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)に向けて、“paper free”は、スタート段階でまず考えるべきものといえる。

ロボ研では、クライアントとの契約は、すべてクラウドサイン※1にて行い、毎月の請求書はクラウド会計ソフトfreeeの請求データで発行、会計処理はAPI連携※2し、紙は使わないこととしている。これは2019年1月の設立以来現在も続けている。

今後、デジタル庁の新設や横断的権限など、政府のDX化に向けて強力な取り組みが進む見通しだ。脱ハンコ政策も、国税庁を含む各種の行政手続で実現に向けて動き始めている。脱ハンコは、スマート行政の一環として、すでに一部の自治体で取り組みが進められてきたが、DX化に向けた号令のもと、行政全体の取り組みとして一気に進むであろう。

脱ハンコは、現物としての紙のやりとりをなくすことにつながる。紙のやりとりは意外に大変である。

会社で契約する場合を例にあげると、

「プリント → 製本 → 押印 → 送り状、返信用封筒作成 → 郵送 → 相手方受取→ 相手方押印 → 返送 → 受取後、ファイリング」という流れである。

実際、これらの業務は紙を移動させていく仕事なのであるが、社内の担当部署、社長を回り、相手方の社内での移動、郵便配送を経由し、ようやく戻る。紙の長い旅路である。紙が移動している期間は、契約は開始されない。大企業の場合は、決裁のため、判子押しの旅路もこれに加わる。担当者不在時には、1泊してしまうこともある。

ちなみに、クラウドサインでは契約内容をクラウド上で相互に決裁、承認すれば、瞬時に契約が締結される。契約のスピード感はまるで違う。契約開始までに3日から1週間の差は出るであろう。

あさひ会計でも、契約はすべてクラウドサインとし、顧問先へ申告書の確認サインも電子サインとする。

紙とヒトの場所が一致しないと次に進まないことによる待機時間、紙を移動させる時間、このコストと失う時間を意識している人は少ない。

時間は平等である。但し、DXを推進する企業としない企業のビジネスで使える時間は同じではない。

 

※1:クラウド上で契約締結を行うサービス。印紙税は、紙の契約書に課税するものであるため、クラウドサインでは印紙税がかからない。

※2:外部のシステムとの連携、機能を呼び出すことをいう。アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略

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