げに恐ろしきは印紙税なり(2018年_3月号)

公認会計士・税理士 田牧 大祐

ヤマト運輸の宅急便送り状の2枚目下の方に小さな字で“運送料一万円未満”の記載があることに気付いている方はいないであろう。送り状は運送契約書にあたり契約金額の記載のない場合は印紙税200円が必要となるため、それをさけるための記載である。
印紙税は、経済取引に伴い作成される契約書や領収書等の文書に課税する税金であり、税務調査での印紙税調査はついでに見る所の印象であったが、最近、印紙税専門の調査官が来ることもあり、印紙税調査を強化しているように感じる。

有名な印紙税調査の過怠税納付事例をあげると、①H信組3千万円、②スーパーD社3千万円、③下着メーカーW社3千万円、④冠婚葬祭業B社1千万円、⑤冠婚葬祭業B社3千万円がある。
納付漏れの内容を見ると、①ローン申込書が内容的に契約成立している金銭消費貸借契約書で課税、②自転車修理承り書(金額の記載なし)が内容的に請負契約書にあたり課税(金額の記載のない請負契約書は200円の課税)、③お客様控えに下着サイズ、支払方法の記載があり請負契約書で課税、④葬儀申込書に、遺族の署名とB社担当者の押印があり契約が成立しており請負契約書で課税、⑤は後で。
印紙税の課税要件はいくつかあるが、①から④はいずれも、表記は申込書等であり契約書ではなさそうであるが、課税要件の“契約の成立”を表す“申込者の意思表示とそれを承諾した意思表示が同じ用紙に記載”されている契約文書となっていた。

仮に、承諾者(会社)の押印等のない、つまり承諾の意思表示がない申込書であれば、契約書ではないため課税されない。あるいは②の場合は、自転車修理承り書に“一万円未満”との記載があれば、請負契約書1万円未満の非課税文書となる。⑤については、笑ってはいけないが、葬儀後四十九日頃に送っていた謝意を伝える“あいさつ状“に葬儀の金額を記載してしまっており領収書となり課税。なぜに金額を入れてしまったのか・・。
その他、大手金融機関でもATMでの利用明細票の印紙税納付漏れ1億6千万円など、印紙税は、一枚の金額は少額であるが、その枚数により多額の納付漏れとなる。さらに過怠税は、損金にならないため、税の負担の大きさは言うまでもない。

印紙税は、たとえば、押印しない(契約を成立させない)、1万円未満の記載を入れておく、注文書等は紙ではなくPDFやメールでやりとりするといった、少しの違いで不要となる税金である。非課税文書か、納付漏れか。税務調査でドキリとしないためにも、一度会社に印紙税課税文書がないか調べておくのが賢明である。

※申込書や注文書という標題でも一定の要件を満たすと契約書になる場合があるので、注意が必要。
※税理士に印紙税の税務代理権限は無く、印紙税の税務調査では税理士は立ち会うことはできない。

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